2024年の春、北陸新幹線が敦賀まで延伸し、東京からのアクセスが飛躍的に向上します。しかし、今回筆者はあえて米原へと足を向け、そこから北上しながら敦賀を目指する道を選びました。
この意図的に選んだルートは、単なる移動以上の体験を求めるもの。彦根城の堂々たる姿、琵琶湖の波間に映る四季の変わりゆく色彩、若狭・美浜・三方五湖の透き通る空気、そして気比神宮の神秘的な静けさ。これら全てが、この道を選んだ理由です。
旅の第一歩は、国宝「彦根城」の威風堂々とした姿と、その足元に広がる城下町での懐かしさに満ちた散策から始まります。続いて、日本最大の湖・琵琶湖のほとりをドライブしながら、メタセコイア並木の緑に心癒される一時を過ごします。若狭・美浜・三方五湖エリアでは、山頂公園からの絶景とともに、地元で愛される海鮮の味に舌鼓を打ちます。最終目的地の敦賀では、気比神宮の神々しい雰囲気に触れ、その美しい松原を散策し、静寂と動の調和を感じ取ります。
目的地に速く到達することも重要ですが、その道中で出会う景色、人々、そして文化に心を開くことで、旅はさらに色鮮やかなものになるのではないでしょうか。東京から敦賀までの路上で出会った、忘れがたい体験と出会いについて、どうぞご一緒にお楽しみください。
Contents
彦根エリア: 国宝「彦根城」探訪と地元グルメ
彦根エリアは滋賀県の心臓部に位置し、日本の歴史と文化を体感できる魅力的な目的地です。この地域の最大の見どころは、国宝にも指定されている「彦根城」です。またその周辺では、日本の古き良き時代にタイムスリップしたかのような体験ができます。
彦根城の探訪から地元のグルメ体験まで、彦根エリアの多様な魅力を紹介します。
日本の国宝「彦根城」を探訪
滋賀県の誇る国宝、彦根城の歴史と魅力を深堀りします。
日本の城郭建築の傑作として知られるこの城は、その保存状態の良さで特に有名です。
天守閣から望む城下町の風景と共に、彦根城のシンボルであるマスコット「ひこにゃん」にも焦点を当て、訪れる人々に愛される理由を探ります。
滋賀県の歴史的宝物!彦根城の築城とその特徴
滋賀県彦根市のシンボル彦根城は、慶長9年(1604年)から20年の歳月をかけて築城された城で、多くの建材は廃城となった周辺の砦から再利用され、天守閣は大津城から、天秤櫓は長浜城から移築されたといわれています。
地理的にも防御に優れた環境に位置する彦根城は、天然の防御壁として琵琶湖を利用し周囲に堀を巡らせ、高い城壁を構えて敵の攻撃に備えていました。
また、水上交通の要所としてもその重要性を有し、交通の要衝である近江国に位置しており、東海道と中山道の二つの街道が交差する戦略的な地点にありました。
江戸時代を通じて、多くの大老を輩出した譜代大名である井伊家14代にわたる居城として、彦根城は井伊家の政治の中心地でした。特に13代藩主井伊直弼は幕末の大老として知られ、幕府存続のため開国を推し進めましたが、桜田門外の変で暗殺されてしまったことでも有名です。
日本が誇る国宝!日本の城郭保存の模範例:天守とそこから望む城下町の風景
彦根城の天守は、日本に現存する12の天守の一つで、国宝に指定されている5つの天守の中に数えられます(他は犬山城、松本城、姫路城、松江城)。江戸時代初期の建築様式を色濃く残すこの貴重な構造物は、城郭建築の優れた例を示し、その価値は非常に高いとされています。
五層四階の木造建築として、白い漆喰壁で覆われた外観は青空に映え、圧倒的な存在感を放っています。瓦葺きの屋根は櫓と連結しており、射撃口や石落としなどの防御機能が当時の戦術を物語る設計となっています。
内部では、歴史を感じさせる木造の梁や柱が見られ、当時の建築技術の高さを伺うことができます。また、さまざまな仕掛けや武具などが展示され、来訪者に当時の武士の生活を想像させます。
この天守の文化的価値は、歴史や文化、技術の発展を伝える重要な教材であり、保存状態の良さは城郭保存技術の優れた実例としても注目されます。
天守からは古い城下町の美しさが一望でき、春には満開の桜とともに日本の伝統美を堪能できます。
また、彦根城はその歴史的価値だけではなく、地域のシンボルとしての価値も高く評価されています。城とその周辺地域は、観光客に日本の歴史と文化を深く理解する機会を提供し、多くの人々に愛されています。
歴史的な建築物としての価値、観光資源としての価値、地域コミュニティの中心としての価値を持つ彦根城は、日本の貴重な宝と言えるでしょう。
彦根城の大人気キャラクター!「ひこにゃん」に会いにいこう
彦根城を訪れたら是非とも一度は会いたいのが大人気キャラクター「ひこにゃん」です。
2007年(平成19年)に築城400年を迎えた彦根城の記念イベント「国宝・彦根城築城400年祭」のイメージキャラクターとして登場し、全国的に人気を博しました。
彦根藩の2代目藩主・井伊直孝をお寺の門前で手招きして雷雨から救ったと伝えられる”招き猫”と、井伊家のシンボルとも言える赤備えの兜を合体させて生まれたキャラクターで、その愛嬌のある表情と人懐っこい性格から老若男女問わず多くの人々に愛されています。
「ひこにゃん」は毎日彦根城周辺に登場します。天候等の状況によりスケジュールは変更されることがありますので、事前に城周辺に掲示されている「本日の登場場所」をご確認ください。
ちなみに、「ひこにゃん」の白くてほわっとしたフォルムから、巷では「餅」という愛称もあるのだとか・・・
彦根のまちを散策:夢京橋キャッスルロード
夢京橋キャッスルロードの散策は、まるで時代を超えた旅のよう!
彦根城の足元に広がるこの商店街は、江戸時代の風情を色濃く残し、訪れる人々に歴史的な魅力を提供します。伝統ある工芸品の店や、地元で愛される近江牛を味わえるレストランなどが並び、歴史と現代が融合する夢京橋キャッスルロードの魅力を紹介します。
まるで江戸時代の城下町にタイムスリップ?!夢京橋キャッスルロード
夢京橋キャッスルロードは、江戸時代の趣を再現した街並みが魅力の商業地域で、彦根城のほど近くにあります。
この地は、かつて一千石以上の武士が居住していた第二郭(内曲輪・うちくるわ)と、中級以下の武士や商人、職人が居住していた第三郭(内町)をつなぐ京橋があった場所であり、商人町としても大変活気があったと言われています。
現在の夢京橋キャッスルロードは、「OLD NEW TOWN(古いよさを生かした新しい活気みなぎる町)」をテーマにしており、白壁と黒格子の町屋風の建物で統一された景観が、かつての城下町の風情を濃厚に残しています。
彦根城が築城された1603年から続く城下町の配置は、今も夢京橋キャッスルロードで感じ取ることができ、訪れる人々に江戸時代の暮らしの文化を伝えています。
道沿いには伝統的な街並みが新しく造り直され、昔懐かしい町家の姿が並び、時代の変遷を経てもその歴史的景観を大事に守り続けています。
夢京橋キャッスルロードでは、伝統と文化を体験することができるだけでなく、地元の味や商品に触れ、日本の歴史的な背景を学ぶことができます。
それはまるで時間を遡り、江戸時代の城下町に足を踏み入れたかのような感覚を与えてくれることでしょう。
夢京橋キャッスルロードで味わう!絶品近江牛ランチ
近江牛は日本三大和牛の一つで、その柔らかく、風味豊かな味わいは高く評価されています。
夢京橋キャッスルロードには近江牛を堪能できる様々な飲食店があり、筆者は「麺匠 ちゃかぽん」でランチを頂くことにしました。
「麺匠 ちゃかぽん」では、近江牛を使用した様々なメニューがありますが、中でも特徴的なのは、彦根藩の歴代藩主をイメージした「赤鬼うどん」シリーズです。
初代藩主・井伊直政公の激烈な性格を表すピリ辛の特製つけだれで楽しむ「一代目赤鬼うどん」は、甘辛く煮た近江牛肉と野菜のナムルを組み合わせた一品であり、締めにはうどんの湯がき汁をつけだれに加えてスープとしても楽しむことができます。
文化人としての十三代目藩主・井伊直弼公を表現した「十三代目赤鬼うどん」は、近江牛の他に地元の食材である赤こんにゃくや丁字麩を使用し、各食材の味わいが活かされています。
ちなみに店名の「ちゃかぽん」は、直弼が茶道(ちゃ)・歌道(か)・能楽(ぽんは能の太鼓の音)のいずれにも造詣が深かったことに由来しているそうです。
最後に、筆者が選んだ二代目藩主・井伊直孝公の無骨で剛直なイメージを反映した「二代目赤鬼うどん」は、熱々のうどんに赤味噌で調味されただし汁をかけ、上等の近江牛のしゃぶ肉をのせた贅沢な料理です。
だしをかけることで近江牛の柔らかさと深い味わいが際立つまさに絶品うどんでした。
さらに、寿司メニューとして近江牛トロ握りや赤身握り、三貫盛りもあり、近江牛の旨みを手軽に味わいたい方に最適です。
このように「麺匠 ちゃかぽん」では、それぞれの料理が過去の藩主たちの個性や彦根藩の歴史を反映したものになっているので、食事をしながら地元の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
クラブハリエ・彦根美濠の舎での休憩
絶品うどんに舌鼓を打ったあとに、是非とも訪れたい場所がこちら「クラブハリエ 彦根美濠の舎」です。
「クラブハリエ」は明治創業の老舗和菓子店「たねや」が展開する洋菓子ブランドで、日本の和菓子の伝統を守りながら、洋菓子に新しい息吹を吹き込むことで知られています。
美濠の舎はその名の通り、美しい堀に囲まれた静謐な空間にあります。
敷地内にはたねやの伝統を受け継ぐ和菓子工房のほか、クラブハリエの洋菓子を製造する工房も併設されており、訪れる人々に開放されています。透明なガラス越しに職人たちが繊細なスイーツを作る様子を見ることができ、その手仕事に心を奪われる人も少なくありません。
なお、筆者が気になったのがこちらのアイス工房。
ここでは季節のフルーツをふんだんに使用したオリジナルアイスクリームが作られており、地元滋賀県産の素材にこだわったアイスクリームは、その風味とクリーミーな食感で、老若男女を問わずに支持されています。
施設内にはたねやとクラブハリエのスイーツを堪能できるカフェもあり、和と洋の調和を楽しむことができます。伝統的な抹茶を使用した和スイーツから、バターの豊かな香りが漂う洋菓子まで、多種多様なメニューが揃っています。ここでしか味わえない限定スイーツもあり、それがまた訪問者を惹きつける理由の一つです。
彦根城の近くに位置するこの店は、旅の途中でふらりと立ち寄るには最適な場所。
歴史を感じる城下町の風情と、現代のスイーツ文化が見事に融合したクラブハリエは、滋賀県彦根市を訪れた際にはぜひとも足を運んで欲しいスポットです。
公式サイト:『たねや クラブハリエ 彦根美濠の舎』
住所:〒522-0064 滋賀県彦根市本町一丁目2-33 TEL:0749-49-2222
営業時間:
[和・洋菓子販売]10:00 ~ 18:00
[アイス工房]11月6日~冬季休業
定休日:年中無休
道の駅「近江母の故郷」での地元との触れ合い
彦根城とその城下町の雰囲気を満喫した後は琵琶湖へ向かいますが、その道中で見つけたのがこちらの道の駅「近江母の故郷」。
その名の通り、温かみのある雰囲気で訪れる人々を迎え入れてくれます。
この駅は地元の恵みがたっぷり詰まった特産品の宝庫であり、地域の人々の手によって育まれた食材が所狭しと並びます。
ここでは滋賀県ならではの新鮮な野菜や果物が季節ごとに店頭を彩り、中でも滋賀県が誇るブランド米「近江米」は訪れた人々の食卓を豊かにします。また、琵琶湖の恵みを受けた淡水魚や地元で愛され続ける伝統的なお漬物など、ここでしか味わえない逸品も多数あります。
特に注目すべきは、地元の農家が丹精込めて作る「近江牛」の製品で、柔らかく豊かな風味の肉製品は訪れる人々を虜にします。
地元の食材を使用した加工品やスイーツも豊富で、地元の食文化を存分に楽しむことができます。
道の駅「近江母の故郷」は食材や特産品だけでなく、地域の人々との交流の場としても機能しています。週末には地元の人々が集い、季節の行事やお祭りが開催されることも。観光客と地元の人々が自然と交流できるイベントは、ここの大きな魅力の一つです。
琵琶湖エリア:息をのむ湖岸の景観と必見の途中下車スポット
日本最大の湖である琵琶湖はその広大な水面と豊かな自然が生み出す息をのむ景観で知られ、湖岸に沿って続くドライブコースは、まさに絶景と癒しの自然体験を提供してくれます。
琵琶湖の透き通る青さが広がる道路を走るドライブはまるで絵画の中を旅しているよう。周囲を取り囲む壮大な自然は四季折々の色彩で訪れる人々の心を魅了します。
そして、ドライブのクライマックスとも言えるのが、メタセコイア並木道。ここは時間がゆっくりと流れるかのような、幻想的な美しさを放っています。
日本最大の湖・琵琶湖を巡る絶景と癒しの自然体験
琵琶湖は、その名の通り琵琶の形をした日本最大の淡水湖で、四季折々の美しい景観と豊かな自然が人々を魅了し続けています。
春には湖岸を彩る桜が開花し、湖面に映る花びらが幻想的な雰囲気を作り出します。夏には涼しげな風が水面を撫で、秋には紅葉が湖の青と対照的な色彩を織りなし、冬には静寂の中で雪化粧をした山々が美しいコントラストを見せてくれます。
ドライブコースとしても人気が高いのが、琵琶湖大橋を含む湖岸道路です。
琵琶湖大橋でのドライブは、まるでポストカードから飛び出したような絶景を巡る冒険です。
美しいアーチが描くその橋は、眼下に広がる湖の鮮やかな景色と調和して、どんな天気の日でも湖の多彩な美しさを引き出します。
太陽が輝く日には、湖面がダイヤモンドのようにきらめき、曇天下でも湖は神秘的な雰囲気を漂わせ、訪れる人々を魅了します。
四季の変化はまさに自然のショーで、新緑や紅葉が琵琶湖をより一層色鮮やかなキャンバスに変えてくれます。
車を走らせると、比良山系や伊吹山といった雄大な山々が遠くにそびえ、日本の自然の美しさを存分に堪能できます。夕暮れ時には、湖と空が創り出すグラデーションが一日の終わりを穏やかに彩り、訪れる人々に心の安らぎを提供します。
車を停めて、歩行者や自転車専用の道をぶらぶらと散策するのも、また一興。
湖岸を歩きながら、次の目的地への想像を膨らませてみてください。橋の周りには自然豊かな観光スポットが点在しており、橋を渡るたびに新しい発見があるかもしれません。
食文化の面では、琵琶湖は多様な湖魚が獲れることで知られており、その代表格がびわますや鮎です。これらを使った郷土料理は、訪れた人々の舌を魅了します。
湖岸にはレストランが多く、新鮮な魚介を堪能できるだけでなく、水辺の風景を眺めながら食事をすることができます。
なお、琵琶湖は美しい自然環境と共に多種多様な水鳥の生息地としても知られており、1993年にラムサール条約に登録された国際的に重要な湿地です。
この地は渡り鳥の重要な休息地であり、中でも優雅なコハクチョウが冬季に飛来する様子は、訪れる人々に感動を与えます。コハクチョウは、その白く輝く羽根と優雅な泳ぎで知られ、琵琶湖の冬の風物詩とも言える存在です。
湖周辺の湿地はこれらの水鳥にとって食料となる豊富な魚類や植物を提供し、また繁殖地としても重要な役割を果たしています。
ドライバー必訪!メタセコイアの壮大な並木道を体験
琵琶湖のほとりを走るドライブの途中で、ぜひ訪れていただきたいのが約2.4キロメートルにわたる「メタセコイア並木」です。
この場所は、季節を問わずに訪れる人々を魅了し続けています。
春には新緑が目を楽しませ、夏は木陰が涼しさを提供し、秋には紅葉が道を彩り、冬は雪化粧した木々が幻想的な風景を創り出します。
その壮大な景色はドライバーだけでなく、サイクリストやウォーカーにも人気があり、早朝や夕暮れ時は日の光が並木道を通り抜ける様子が美しく、写真撮影に最適です。
特に秋の紅葉は圧巻で、赤や黄色に色づいた葉が道を彩ります。
近隣にはカフェや小さなお店も点在しており、地元の特産品を味わったり、オリジナルのお土産を選んだりする楽しみもあります。
琵琶湖ドライブの寄り道スポットとして、また心をリフレッシュしたい時の散歩道としても、メタセコイア並木はおすすめです。自然との調和が生み出す幻想的な光景は、訪れる人々の記憶に深く刻まれることでしょう。琵琶湖を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。
若狭・美浜・三方五湖エリア:自然の息吹と海鮮の宝庫
若狭・美浜・三方五湖エリアは、日本海に面した自然豊かな地域です。この地域は、壮大な景色、新鮮な海の幸、そして地元の文化が織り成すユニークな魅力を持っており、訪れる者に忘れられない体験を提供してくれます。
絶景:三方五湖レインボーライン山頂公園
自然に癒される時間:三方五湖レインボーライン山頂公園の探索
三方五湖レインボーライン山頂公園は、豊かな自然と息をのむような景色が自慢の場所です。2020年4月にリニューアルオープンしたこの公園は、美しい三方五湖や日本海を一望できる絶景スポットとして知られています。
三方五湖レインボーライン山頂公園への旅は、まるで空を舞う冒険のようです。リフトとケーブルカーが、第一駐車場から始まるこのワクワクする空中旅行の主役!開放的なリフトに乗れば、風を切って鳥のように飛びながら、目の前に広がる自然の絶景に心を奪われます。一方で、ケーブルカーでは、快適な室内から四季折々の景色を眺めながら、頂上へと安全に運んでくれるのです。登山が得意でない方や足腰に不安がある方でも、これらの乗り物を使えば、山頂で待ち受ける息をのむような景色を楽しむことができます。天候を気にせず、どんな方でも山の魅力を存分に味わえるのです。
三方五湖レインボーライン山頂公園へのアクセスには、リフトやケーブルカーが重要な役割を果たしています。第一駐車場から出発するリフトとケーブルカーに乗れば気分はまるで空中散歩!
開放的なリフトに乗れば、爽やかな風を感じながら目の前に広がる自然の絶景に心ゆくまで楽しむことができ、一方で、ケーブルカーでは、快適な室内から四季折々の景色を眺めつつ頂上へと安全に運んでくれます。
登山が得意でない方や足腰に不安がある方でも、これらの乗り物を使えば山頂で待ち受ける息をのむような景色を楽しむことができます。
登り始めると周囲の景色が徐々に変わり始めます。街の景色が点々と小さくなり、やがて目の前に広がるのは、五つの湖が織り成す壮大な景観。
三方五湖はその名の通り、三方を山々に囲まれた五つの湖からなり、天候や時間によって様々な表情を見せてくれます。まるで自然が持つ生命力をそのまま色に変えたかのような、鮮やかなブルーとグリーンが目を引きます。
山頂に到達すると、目の前に広がるのは三方五湖の絶景!
風が湖面を優しく撫でるたびに水面がきらめきを増し、まるで水彩画のような美しさです。ここから見る景色は四季折々の自然の移ろいを感じさせてくれ、訪れる人々に心からの癒しを与えてくれます。
公式サイト:三方五湖レインボーライン
住所:福井県三方上中郡若狭町気山18丁目2-2 TEL:0770-45-2678
まるで空中散歩!?絶景の天空テラス
三方五湖レインボーライン山頂公園には「三方五湖に浮かぶ天空のテラス」をコンセプトにした5つのテラスがあり、それぞれ独自の特色を持っています。
・美浜テラス(東の展望台):
日本海と三方五湖全ての湖を見られる唯一の展望台です。ここでは、最大14人が同時に利用できる足湯と16席のカウンターテラスからの絶景を楽しむことができます。
なお、こちらの展望台は「クールジャパンアワード2019」を受賞するなど、国内外からも注目を集めています。
・若狭テラス(西の展望台):
三方湖・水月湖・菅湖などを望み、天気が良ければ丹後半島も見えます。このテラスでは、日本古来のおまじないである「かわらけ」を湖に向かって投げることもできます。
・五湖テラス(南の展望台):
三方五湖をゆっくりと眺めるためのテラスで、丸いソファーテラスや2人掛けのカウンターテラスが設置されています。
・中央テラス(北の展望台):
越前岬から敦賀半島や常神半島の景色を望むことができ、ウッドデッキテラスや山頂カフェ「なないろ」でリフレッシュすることができます。
・茶屋テラス(北西の展望台):
丹後半島を一望できる展望台で、和風カフェ「五湖庵」があり、抹茶や名物の焼き団子を味わうことができます。
ひとつひとつ個性を放つ五つのテラスは、三方五湖の自然を五感で感じながら、様々な角度から景色を楽しむことができるよう設計されています。360度の大自然に囲まれながら、自分だけの特等席で心静かに景色を満喫するのも良いですね。
また、三方五湖レインボーライン山頂公園は「恋人の聖地」としても認定されており、「一社両拝」、「和合神社」、「幸せの鐘」など、恋愛成就のパワースポットとしても知られています。
さらに、天候の変化にも対応した無料レンタルのレインボー傘があり、雨の日でも快適に過ごせます。
三方五湖レインボーライン山頂公園は、自然の美しさに囲まれた場所で、五つの湖が作り出す静謐な風景は、都会の喧騒を離れ心安らぐ時間を提供してくれる、まさに訪れるすべての人にとっての癒しの宝庫といえるでしょう。
若狭美浜の漁港でへしこを知る
へしことは、福井県沿岸部で作られる伝統的な発酵食品で、2007年12月には農林水産省から発表された「日本の郷土料理百選」にも選ばれるなど、全国的に人気・知名度が高まっている注目の食べ物です。
へしこという名前の由来には諸説あり、漁師が魚を樽に押し込む行為を「へし込む」と言ったことから「へし込まれた物」が略されて「へしこ」と呼ばれるようになったという説や、魚を塩漬けにする際に滲み出てくる水分を「干潮(ひしお)」と呼び、この言葉が訛って「へしこ」となったとする説もあります。
へしこの歴史は江戸時代中期頃から始まったと考えられており、福井県は古くから皇室や朝廷に食料を献上する「御食国(みけつくに)」として知られ、鯖をはじめとする海産物が特に重宝されていました。
へしこの製造方法は、取れたての新鮮な魚を開いて内臓を取り除き、重石をして塩漬けにするところから始まります。その後、魚から水分が出たところで米糠をまぶして漬け込み、木桶や陶器の中で数ヶ月間熟成させます。
この熟成過程で、魚は特有の風味と旨味を増し、独特の発酵臭を帯びます。
この臭いはへしこを初めて経験する人にとっては少々強烈かもしれませんが、愛好者にとってはたまらない魅力の一つです。
へしこは冬場に漁に出られない時期の貴重なタンパク源として、各家庭で作られてきた歴史があり、現在も福井県内の飲食店やお土産物店で提供されています。
食べる際には、砂糖・醤油・七味などでさらに味付けをし、酒の肴やお茶漬けなどとして楽しんでみてください。
鯖街道の歴史とご当地グルメ「鯖サンド」
鯖街道の由来と歴史的背景
鯖街道(さばかいどう)は、歴史的に重要な日本の街道の一つで、福井県の若狭国(現在の嶺南地方)と古都京都を結んでいました。
この街道の最も著名な特徴は、若狭地方から京都へと鯖を含む豊富な海産物を運んでいたことです。そのため、街道の名称は「鯖街道」として広く知られるようになりました。
鯖街道の歴史は古く奈良時代に遡ることができ、時を経て特に江戸時代にはその価値が一層深まりました。
若狭地方は、北前船によって運ばれる様々な物資や海の幸に恵まれた地としても広く知られていました。小浜港は日本海に面した若狭湾にあり、そこの涼しい気候が海産物の品質を向上させるのに一役買っていました。これらの海の恵みは山々を越え、京都へと届けられ、昔の京都の食文化に彩りを加えていたのです。
街道のルートはいくつかありましたが、特に有名なのは、小浜から熊川を経て滋賀県朽木を通り、花折峠を越えて京都府大原へと続く出町までの若狭街道です。この約80kmの道のりは、現代の交通手段なら2時間もかからずに到達できますが、当時の人々は海産物を詰めた籠を背負い、一昼夜かけてこの険しい道を歩いていたのです。
このようにして若狭から京都へ運ばれた鯖は、当時の保存技術においても長持ちする珍しい魚で、鯖寿司や焼き鯖寿司など、京都の食文化にとって欠かせない食材となりました。
鯖街道は、京都の食卓を豊かにするだけでなく、若狭地方の経済的な繁栄にも繋がる重要な役割を果たしてきました。
若狭湾で水揚げされた新鮮な鯖は京都で大変な人気を博し、若狭を「御食国(みけつくに:皇室や朝廷にそれぞれの地域の特色ある豊かな食材を納めた国 のこと)」と呼ぶほどの名声を地域にもたらしました。
これは、京都の人々の食生活に欠かせない食材を提供した地域としての特別な地位を示しています。鯖街道は日本遺産に認定されており、その歴史的な価値が高く評価されています。日本の豊かな食文化を築く上で、鯖街道の役割は非常に大きかったと言えます。
このように、鯖街道は経済、文化、そして歴史の三方面にわたって日本において大きな影響を与えてきました。物理的な距離を超えて地域間の結びつきを強化し、日本の食文化の発展に貢献してきたのです。今日に至るまでその道が残されていることは、過去への敬意を示すと共に、私たちにとって先人たちの暮らしや文化に想いをはせるための、かけがえのない窓口となっています。
地元で愛される美食:「鯖サンド」の魅力とその秘密
「鯖サンド」は、若狭湾で捕れた新鮮な鯖を使ったサンドイッチで、伝統を今に伝える人気のご当地グルメです。地元の食材を活かしたシンプルながらも味わい深い料理として親しまれています。
鯖サンドは、福井県小浜市を中心とした地域で親しまれている新たなご当地グルメです。若狭地方の名物料理として知られる焼き鯖寿司や鯖を糠漬けにした「へしこ」とともに、鯖を使用した料理の一つとして地元で人気があります。このサンドイッチは、鯖と色鮮やかな野菜を組み合わせたもので、おしゃれで手軽な点が魅力です。
特に『Saba*cafe』で提供されるサバサンドは、カリッとした食感の自家製フランスパンに肉厚の焼鯖をはさんでおり、若狭地方の伝統的な調味料「柑なんば」を使った特製マヨネーズが味の決め手となっています。焼鯖から溢れる脂とソースがパンにしみ込み、予想以上に良い相性を示しています。ボリューム満点で、ハーフサイズの提供もありますし、テイクアウトも可能で、価格も手頃です。居心地の良いカフェでゆっくり味わうのも良し、テイクアウトして自然の中で食べるのも良しと、利用者の気分に合わせて楽しむことができます。
サバサンドはトルコの名物料理であり、トルコでは屋台でも売られている庶民の味としても知られています。しかし、福井県におけるサバサンドは、地元の海の幸である鯖を活かした日本独自のアレンジが加えられています。鯖街道沿いの飲食店などで提供されることから、福井県の歴史や食文化を象徴するグルメとしても位置付けられているのです。
敦賀エリア:気比神宮から人道の港へ!神々の自然と人道の軌跡
敦賀エリアは、その古き良き歴史と自然の美しさで知られる福井県の魅力的な地域です。
この地域の象徴である気比神宮は、神秘的な雰囲気と豊かな自然に囲まれ、訪れる人々に特別な体験を提供しています。神宮の周辺に広がる白砂青松の美しい景観は、日本の伝統的な自然美を象徴しており、訪問者を魅了します。また、敦賀市は「人道の港」としても知られており、その歴史的背景には多くの物語が隠されています。
白砂青松が織りなす絶景!気比神宮と周辺の自然を満喫
気比神宮とは? – 神々が宿る場所の歴史と神秘
気比神宮は北陸道の総鎮守とされる由緒正しい神社で、主祭神である伊奢沙別命(いざさわけのみこと)は2000年前にこの地に降り立ったと伝えられています。「気比大神」または「御食津大神」とも称され、昔から海の神として人々に崇拝されてきました。
第二次世界大戦による空襲で大部分の社殿を失いましたが、現在の主要な社殿は戦後に再建されました。空襲を免れた大鳥居は日本三大木造鳥居に数えられ、国の重要文化財にも指定されています。
文化的な価値も高く、多くの祭事があり年間を通じて様々な行事が行われています。
中でも毎年9月に行われる「気比神宮例祭」は、9月2日の宵宮祭から始まり9月15日の月次祭で終わるまで、祭礼は半月にも及ぶことから「気比の長祭り」と呼ばれ、多くの参拝客でにぎわいます。
見逃せない気比神宮の見どころ – 神聖なる空間の魅力を紐解く
気比神宮には多くの見どころがありますが、その中でも筆者が特にオススメしたいスポットを紹介したいと思います。
1.大鳥居
気比神宮の見どころの一つである「大鳥居」は、その壮大さと歴史的価値で知られています。国の重要文化財にも指定されており、奈良の春日大社、広島の厳島神社と共に「日本三大木造鳥居」と称されるほどです。寛永年間(1624年から1644年)に建造されたこの大鳥居は、その後の歴史の波乱にも耐え、特に第二次世界大戦中の空襲から免れた数少ない構造物の一つとして現在に至ります。
朱塗りの鳥居は、神聖な領域への入口を示す重要なシンボルであり、氣比神宮の顔とも言える存在です。扁額には有栖川宮威仁親王が書いたと伝えられる「氣比神宮」という文字が刻まれており、親王の書をこのような形で見ることができるのは非常に珍しいことです。
2.社殿
気比神宮の社殿は、その重厚な造りと歴史的な経緯から見どころの一つです。戦後に再建された現在の社殿は、外拝殿を始め、四社の宮、本殿、内拝殿と続きますが、これらはかつての姿を模して作られたものです。特に、焼失する前の旧本殿は、慶長19年(1614年)に結城秀康によって再建されたもので、その当時は国宝に指定されていたほどの価値を持っていました。
現在の社殿は、慶長年間の優美な建築様式を今に伝える貴重な文化財として、多くの参拝者を魅了しています。構造は木造で、屋根は茅葺きや銅板葺きで覆われており、日本の伝統的な神社建築の特徴を色濃く残しています。社殿の中でも本殿は神社の中核を成す建物であり、伊奢沙別命を始めとする祭神が祀られています。
3.松尾芭蕉の像と句碑
松尾芭蕉は元禄2年(1689年)に敦賀を訪れ、気比神宮を参拝しました。
その際に気比神宮の境内で特に美しい月夜に感銘を受け、いくつかの句を詠じ、これらの句は境内にある句碑に刻まれています。
芭蕉が詠んだ句には、気比神宮の神々しさやその場所の歴史的重要性を称える内容が含まれており、気比神宮の全域が「おくのほそ道の風景地」として国指定名勝となっています。
4.境内の神様とパワースポット
気比神宮の建造中に大岩から突然水が湧き出し、これが長命水の起源とされています。当時合祀された神々が長寿であったため、この水は長寿や健康を象徴するものとして崇められるようになりました。
長命水は、大鳥居から参道を進んで二の鳥居のすぐ手前にあります。小さいながらも亀の口から湧き出る霊水として地元民からも親しまれています。
長命水は無病息災や延命長寿にご利益があるとされ、1300年以上にわたり信仰されています。参拝者はこの水を飲むことによって健康を保つことができるということで、人気のパワースポットとして知られています。
気比の松原を散策 – 気比神宮の息吹を感じる風光明媚な松林
気比神宮から西に3kmほどのところに広がる松林が「気比の松原」です。
静岡県の三保の松原、佐賀県の虹の松原と並んで日本三大松原の一つとして知られており、1934年には国の名勝に指定された美しい景勝地です。この地域は白い砂浜と青々とした松林が織り成す「白砂青松」の風景で有名で、散策路も整備されており日本の遊歩百選にも選ばれています。
敦賀湾の奥に面した松原の面積は約40万平方メートルにも及び、長さ約1.5キロメートル、広さ約34万平方メートルにわたってアカマツとクロマツが約17,000本生い茂っています。海岸の松林においては珍しくアカマツが85パーセントを占めているのが特徴で、樹齢は平均200年にも及びます。
気比の松原は、季節によって様々な表情を見せます。夏には市営松原海水浴場として開放され、多くの海水浴客で賑わいます。また、日本海一とも称される花火大会や灯籠流しが行われる会場としても知られています。一方、冬は雪化粧をした松林と荒波が織り成す壮麗な風景が広がります。
なお、伝承によると聖武天皇の時代に外国の船団が来襲した際に、一夜にして松林が浜辺に出現し、松の木の上には無数のシラサギがとまっていたことから、異国の人々がこれを大軍勢の旗指し物と見間違え、恐れをなして逃げ去りました。この出来事が「一夜にして生まれた松原」として語り継がれ、それが気比の松原の別称「一夜の松原」の由来になったとされています。
この伝説は気比の松原の神秘的な雰囲気をより際立たせ、訪れる人々に長く語り継がれている物語となっています。
公式サイト:『北陸道総鎮守 氣比神宮』
住所:〒914-0075 福井県敦賀市曙町11-68 TEL:0770-22-0794(受付時間:9時〜17時)
開・閉門時間
【4月〜9月】午前5時~午後5時
【10月〜3月】午前6時~午後5時
人道の港としての敦賀市の歴史
敦賀市は、豊かな自然環境と共に、重要な歴史的出来事の舞台としての顔を持っています。特に「人道の港」としての役割は敦賀市の文化と歴史において中心的な位置を占めています。
明治時代末期から昭和初期にかけての動乱の時代に、敦賀港はヨーロッパとの交通の要衝として重要な役割を果たしてきました。
1920年代にはシベリアから逃れてきたポーランド孤児が上陸し、さらに、第二次世界大戦中には、リトアニア駐在の日本の外交官杉原千畝氏が発給した「命のビザ」を持つユダヤ人難民が敦賀に到着しました。
敦賀市民は困難に直面していたこれらの外国人を温かく迎え、敦賀港が「人道の港」と呼ばれる由来となっています。
この歴史を伝えるために建設された「人道の港 敦賀ムゼウム」では、杉原千畝氏が発行したビザの複製や、当時の敦賀を描いた写真、敦賀市民と難民との間に交わされた手紙など、貴重な資料が展示されています。
これらの展示品は単なる古文書や写真を超え、深い人間愛と勇気の証として訪れる人々に命の尊厳と平和の重要性を伝えています。
公式サイト:『人道の港 敦賀ムゼウム』
住所:914-0072 福井県敦賀市金ヶ崎町23-1 TEL:0770-37-1035
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
令和5年4月から12月までの土・日・祝は19:00閉館(入館は18:30まで)
休館日:水曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始
まとめ:速さだけが旅ではない!東京から敦賀へゆったり巡る日本の風景
いかがでしたでしょうか?
国宝彦根城の堂々たる姿や、夢京橋キャッスルロードの風情ある景色、そして近江牛の深い味わい。琵琶湖の壮大な自然と、その畔を彩るメタセコイア並木。若狭・美浜・三方五湖エリアの息をのむような景色と新鮮な海の幸。そして、敦賀の気比神宮とその松原の静寂と、人と自然が織りなす歴史の重み。
これら一つ一つの体験が、ただ敦賀を目指す旅ではなく、日本の文化と歴史や自然の美しさに深く触れる旅となり、新しい新幹線のルートがもたらす利便性とは別に、ゆったりとした時間をかけて日本各地の地域性を味わうことの価値を再発見しました。
敦賀へと続く道の途中で立ち寄った各地で感じた、歴史の息吹と現代に生きる私たちとの繋がり。それは、今後も色褪せることなく記憶に残り続けることでしょう。
私たちはよく、目的地に素早く到達することに重きを置きますが、この旅は異なりました。
それぞれの地域にじっくりと足を踏み入れ、その土地土地の物語を聞き、味わい、感じることで、真の旅の喜びを見出すことができました。
東京から敦賀への旅路は、ただの移動ではなく、豊かな経験と心の成長へとつながる道程であることを、この旅を通じて伝えたいと思います。これからも、新しい交通の便は私たちに多くの可能性を提供してくれるでしょうが、旅の醍醐味は、やはりその道中にあるのかもしれません。
公式サイト:『彦根城』
住所:〒522-0061 滋賀県彦根市金亀町1番1号 TEL:0749-22-6100
開館時間:午前8時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:令和5年(2023年)12月25日(月)~31日(日)
令和6年(2024年)1月16日(火)~2月16日(金)・3月18日(月)・19日(火)