吉田真一郎「意識の白」展がHOSOO GALLERYで開催中。約半世紀にわたる自然布の探究から、「みること」と意識を問う新作を公開

吉田真一郎《白》2026年 展示風景
吉田真一郎「意識の白」展示風景 HOSOO GALLERY 2026 年 Photo by Kotaro Tanaka

京都・烏丸御池のHOSOO GALLERYで、2026年11月6日(金)から2027年3月20日(土)まで、吉田真一郎の展覧会「意識の白」が開かれています。吉田は約半世紀にわたり日本の自然布を集め、研究してきた美術家です。本展では、大麻(たいま)と苧麻(ちょま)の白布を並べた新作《白》で、かつて日本人がみていたと考えられる白の気配を浮かび上がらせ、物をみるとはどういうことかを問い直します。

あわせて、布になる前の糸だけで構成し、みることの深層にある意識へ問いを向ける新作インスタレーション《意識の白》を発表するほか、蒐集資料を会期中に入れ替えて紹介する「実験の間」も設けています。織物の可能性を探ってきた同ギャラリーは、本展を、布を構成する繊維や糸、そしてそれらをみる人自身の意識へと視野を広げる試みと位置づけています。入場は無料です。

大麻布に苧麻布を加えた新たな《白》

吉田真一郎《意識の白》2026年 展示風景
吉田真一郎《白》2026 年展示風景 Photo by Kotaro Tanaka

吉田は2021年、同ギャラリーの「白の気配」展で、約半世紀の歳月を経て完成させた作品《白》を発表しました。同じ平織で織られた大麻布の白布を並べ、布と布のあいだに現れる気配を見せる作品でした。

本展の《白》(2026年)は、そこに苧麻布を加えた新作です。素材は、江戸末期から明治(1850〜1900年頃)の大麻・苧麻の着物をほどいた白布です。吉田はそれらを並べることで、一枚ごとの微細な違いと、布と布のあいだに現れる気配を見せています。大麻と苧麻は日本で古くから使われてきた植物繊維で、縄文時代の遺跡から出土した編布にもその歴史がうかがえます。江戸時代に木綿が普及するまでは、庶民から上流階級まで衣服に広く用いられていました。どちらの布も、水に浸して日に晒す工程を繰り返すことで白くなります。

糸だけで構成する新作インスタレーション《意識の白》

吉田真一郎「意識の白」実験の間 展示風景
吉田真一郎《意識の白》2026 年展示風景 Photo by Kotaro Tanaka

展覧会名と同じタイトルを持つ新作は、吉田が集めてきた千点以上の資料をもとに、要素を最小限まで絞り込んで構成したインスタレーションです。素材は、大麻繊維の「ヘソ巻」と、そこから引き出した糸です。「績(う)む」とは、麻の繊維を細く裂き、端と端を撚りつないで長い糸にする作業を指します。ヘソ巻は、こうして績んだ糸を、撚りをかける前の状態で手で何重にも巻いた糸束です。作品には、明治末期から昭和初期(1900〜1945年頃)に岩手県、山形県、新潟県周辺でつくられた複数のヘソ巻が使われています。

糸には、績んだ人の手加減の違いや、長年巻かれたまま保管されてきたことで生じた揺らぎが残っています。それらは逆光のもとで、かすかな陰影となって現れます。織り上がった布に現れる気配をみつめる《白》に対し、《意識の白》は布になる前の糸だけで構成することで、みることの奥にある意識へと問いを向けています。

資料を入れ替えて紹介する「実験の間」

吉田真一郎「意識の白」実験の間 展示風景
吉田真一郎「意識の白」実験の間展示風景 Photo by Kotaro Tanaka

会場には、吉田の蒐集資料を会期中に入れ替えながら展示する「実験の間」も設けられ、作品に至るまでの試行錯誤の過程を紹介しています。開幕時に展示されているのは、大麻布の仕事着「オクソザックリ」です。オクソ(苧屑)は、大麻の苧から粗皮を削り取る際に出る繊維くずを指します。明治時代まで、福井県、石川県、岐阜県周辺では、これを緯糸に用いて織った布が日常の仕事着として使われていました。糸そのものから構成される《意識の白》に対し、オクソザックリは糸づくりの過程で取り除かれた繊維から生まれた布です。

各展示作品の資料の詳しい解説は、会場のハンドアウトに掲載されたQRコードからウェブで読むことができます。

予約制のガイドツアーも予定

会期中には、予約制のガイドツアー(各回10〜15名)が不定期に開かれます。吉田が所有する約1,200点の麻布資料から、大麻・苧麻を中心とした五大麻布を紹介するほか、芭蕉布や葛布、藤布など日本各地に伝わる自然布についても解説するプログラムです。開催日時と予約方法は、決まり次第HOSOO GALLERY 公式サイトと公式Instagramで案内されます。

吉田真一郎について

吉田真一郎 portrait

1948年京都府生まれ。近世麻布研究所所長。20代で絵画制作を始め、1977年に渡った西ドイツで現代美術家ヨーゼフ・ボイスと出会いました。帰国後、ボイスの影響から古美術や民俗学を独学で学び、江戸時代の苧麻布・大麻布の繊維と糸に関する研究を発表してきました。主な博物館展示に、奈良県立民俗博物館「奈良晒」展、十日町市博物館「四大麻布」展などがあります。共著に『別冊太陽 日本の自然布』(平凡社、2004年)。2018年には麻布の蒐集と研究が評価され、第六回水木十五堂賞を受賞しています。

吉田真一郎「意識の白」開催概要

展覧会名:吉田真一郎「意識の白」

会期:2026年11月6日(金)〜2027年3月20日(土)
※祝日、年末年始(12月29日〜1月3日)を除く

開館時間:10:30〜18:00(入場は閉館の15分前まで)

会場:HOSOO GALLERY(京都府京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F)

アクセス:地下鉄烏丸線・東西線「烏丸御池」駅6番出口から徒歩2分

入場料:無料

電話:075-221-8888

主催:株式会社HOSOO

補助:日本博

公式サイト:HOSOO GALLERY 吉田真一郎「意識の白」

Direction & Editing
Project Direction / Editor-in-Chief: Taro Okazaki

プロジェクト統括・編集長:岡崎 太朗

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