ボカロ神曲 初音ミク「千本桜」の魅力に迫る

明かりに照らされオレンジ色に反射する夜桜の画像

「千本桜」が 耳から離れない魅力

「千本桜」
その名を聞けば、儚くも美しい日本の風景が思い浮かびます。初音ミクの声が、風に乗って遠くへ響き渡る光景。

この記事では、我々はその美の核心に迫ります。初音ミクの歌声が紡ぐ「千本桜」の魅力を、音楽の響きから歴史的な背景まで、綿密に探ってみましょう。
ボーカロイドという技術の極致が生み出したこの名曲の世界へ、一緒に深く魅了されてみませんか?

はじめに~「千本桜」を聞こう~

♪「千本桜」- WhiteFlame feat 初音ミク

作詞・作曲・編曲:黒うさP
2011年9月17日、インターネット(ニコニコ動画)にて初公開。

歌詞は、明治維新後、西洋の文化を取り入れたはじめた時代を舞台とし、暗喩的に現代を風刺する内容。
MVは、ミクをはじめとするキャラクターたちが大正を感じさせる衣装を身に纏っており、大正浪漫ふうのものになっています。

そもそも「ボカロ」って何?

正式名称は「VOCALOID(ボーカロイド)」

ボーカロイドは、ピアノやバイクで有名な「ヤマハ」が開発した、音声合成技術およびその応用製品の総称です。音程と歌詞を入力して、サンプリング(事前に録音し再構築)された人の声「ボーカル音源」を元に歌声を作ることができます。

マイクに声を吹き込む女性声優の画像

「初音ミク」とは、「未来的なアイドル」をコンセプトとした、「クリプトン・フューチャー・メディア」から発売されているボーカロイド用ボーカル音源およびそのキャラクターのことです。

ボーカル音源ごとに異なるキャラクターがついていることがほとんどで、先ほどの「千本桜」のMVに登場したキャラクターたちもボーカロイドになります。

ミク以外のボカロの歌声を聞いてみましょう。

♪「ドーナツホール」

ボーカロイド「GUMI」が歌った楽曲。
(作詞・作曲・編曲:ハチ)

♪「六兆年と一夜物語」

ボーカロイド「IA」が歌った楽曲。
(作詞・作曲・編曲:kemu)

作詞・作曲・編曲を手掛けた黒うさPとは?

同人音楽サークル「WhiteFlame」に所属。
ニコニコ動画やyoutubeなど動画投稿サイトへ、ボーカロイドを使用した楽曲の発表を行っています。

代表曲は「千本桜」、「カンタレラ」など。

♪「カンタレラ」

歌っているのは「KAITO」と「初音ミク」。

Q. 「P」とは何を意味するの?

A.プロデューサーの略称。

ミキサーなどたくさんの機械に囲まれたプロデューサーの画像

ボーカロイドは、誰もがボカロをプロデュースするように曲作りができることから、一般的にボカロ楽曲の作者に対して、ボーカロイドプロデューサーすなわち「ボカロP」という敬称が用いられるようになりました。作曲者の名前の後ろにつけたりして、そのまま「ピー」と読みます。

「千本桜」の魅力を深堀り!

小川の両側の満開の夜桜が咲いている。提灯やライトアップにより桜がピンク色に輝いている

「千本桜」は初音ミクだけでなく、ボーカロイド全体でもかなりの人気を誇る楽曲です。その功績を称えて「神曲(かみきょく)」とも呼ばれていますね。
ここではその魅力を具体的に解説します。

どれだけ人気なの?

レコチョクによる「好きなボカロ曲ランキング」調査(2012年8月)において、なんと、1位を獲得しています。

また、カラオケ曲としても人気で、2012年度カラオケランキングでは、ボーカロイド史上初となる総合カラオケランキング3位を獲得しました。

カラオケボックスで歌を楽しむ女性の画像

公開後3年経った2014年においても、JOYSOUNDのカラオケランキング2位を記録したほか、2016年2月11日にはニコニコ動画にて、「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」「メルト」に次ぐボーカロイド楽曲通算3曲目の1000万再生を達成しました。

どのような魅力があるのか?

やはり、何と言っても古いようで新しい、大正浪漫ふうの「和テイスト」ではないでしょうか。

「千本桜」の古典的なテイスト

この曲は「ヨナ抜き音階」(※)という、日本の伝統の音階が使われています。更に「千本桜」は「レ(D)で始まり、レで終止」しています。これは雅楽に由来する曲調です。そのため、日本人は無意識のうちに馴染みを感じているのではないでしょうか。

着物をきて琴を弾く女性の手元をズームアップした画像


※ヨナ抜き音階……簡単に述べると、西洋の音階(例:ドレミファソラシ)から、4(ヨ)と7(ナ)番目の音を抜いた音階(例:ドレミ■ソラ■)のこと。日本の音階は、7つの音から構成される西洋のものに比べ、5つの音で構成されていることが多い。

「千本桜」はクラシック音楽の理論に基づくと調(キー)はd-moll(Dm)になりますが、実際はヨナ抜き音階なので、第4音と第7音にあたるソとドをあまり使っていません。レ・ミ・ファ・ラ・♭シの5音を中心に作曲されているのです。

そのため、海外のボカロファンには馴染みの薄い音階が新鮮に感じられたのではないでしょうか。海外人気はここに由来するかもしれません。

なお、「ヨナ抜き音階」「日本の伝統音階」について、音楽理論的にもっと知りたい方は下記の記事をご覧ください。

日本の音楽〜受け継がれる和の音階 – ページ 2 – Guidoor Media | ガイドアメディア

「千本桜」のモダンなアレンジ

先ほどカラオケの話題が上がりましたが、歌ったことある方はお分かりでしょうが、「千本桜」はかなり歌うのが難しい曲です。

喉に違和感を覚え、顔をしかめる男性シンガーの画像

なぜならアップテンポと軽快なリズムで、息継ぎをしている暇がないから。

その点、ボーカロイドはブレスの必要がありませんから、どんなに長いフレーズもきれいに歌うことができます。ある意味「ボーカロイドらしい」、真新しい曲調だったのです。

歌詞やMVにも注目!

「千本桜」の魅力はメロディだけでなく、歌詞やMVにもあると考えられます。ボーカロイド楽曲は「動画」としてアップされることが多いため、「はじめて曲を聞く時」イコール「はじめてMVを見る時」になります。

小林清親「墨田堤の花見」1876年の浮世絵
小林清親「墨田堤の花見」1876年

軽快な楽曲と、大正時代風の衣装に身を包んだミクたちの華やかでかっこいいMVに、初見は誰もが圧倒されたことでしょう。

また、歌詞は「悪霊退散」「三千世界」といった意味深な(中二病的な)フレーズが散りばめられた難解な文章となっており、「結局どういう意味なの?」と何度もリピートした人も多いことでしょう。

「千本桜」に魅了された人々

「千本桜」が好きなのは一般のリスナーだけではありません。ほかのネット音楽制作者、プロのアーティスト、文化人にも影響を与えました。

ここでは様々な「千本桜」のカバーを聞いてみましょう。

まらしぃによる「千本桜」

ニコニコ動画やYouTubeなどの動画投稿サイトを中心に活躍するピアニスト・まらしぃ
彼によるピアノカバーは、2013年、トヨタ自動車『アクア』のCMソングとして採用されました。

このカバーを聞いて、本作やボカロの存在を知った方も多いのではないでしょうか。

和楽器バンドによる「千本桜」

尺八・箏・三味線・和太鼓の和楽器、ギター・ベース・ドラムの洋楽器による楽器隊に、詩吟師範によるボーカルという編成の8人組ロックバンド「和楽器バンド」

ちなみにベーシストもボカロPで、彼が作曲した「吉原ラメント」もまたボカロの人気曲として名を連ねます。
また、先ほど紹介した「ドーナツホール」を手掛けたボカロP「ハチ」も、現在シンガーソングライターとして第一線で活躍しています。別名義で活動していますが、誰だか分かりますか?

中村獅童と「千本桜」

歌舞伎役者の中村獅童が、2016年4月29日、30日に開催された「ニコニコ超会議2016」にて、本曲と歌舞伎義経千本桜を融合させた独自演目「今昔饗宴千本桜」を初音ミクとともに披露しました。

小林幸子による「千本桜」

※2:49から本曲の一部分を聞くことができます。

2015年の第66回NHK紅白歌合戦にて歌ったことも記憶に新しいですね。
一見、なぜ?と思える選曲ですが、実はもともと本曲を含むボーカロイド楽曲をカバーしたアルバムを発表していました。1500枚限定、しかもコミケで小林幸子本人が会場で頒布しました。

ちなみに、小林の声をボーカル音源にしたボーカロイド「Sachiko」も存在します。

広い世代から愛される「千本桜」

初音ミクの歌声が紡ぐ「千本桜」の魅力を多角的に探求しました。その音楽の奥深さを理解し、歌詞やMVを通じて感じ取ることで、これまで以上にこの名曲の美しさと多様性が鮮明に浮かび上がったことでしょう。

この名曲が時を超えて、数多くのアーティストたちによってカバーされ続けている事実。
それは、その普遍的な魅力が、人々の心に深く刻まれていることを示しています。これからも、新たな時代においてもこの魅力は色褪せることなく、多くの人々を魅了し続けることでしょう。

初音ミクの「千本桜」の美しい旋律が、いつまでも私たちの心に響いていることを思い起こしながら、これからも音楽の魅力に耳を傾けていきたいですね。

執筆:Yo-Ohtaki

2件のコメント

千本桜を歌うのが難しいのは、初めて知りました。私は早く歌いたくって、1日で歌詞を全て覚えたのが自慢です。よく歌っています。

私も千本桜大好きです!よく見てみたら、意味が難しいんですね…

匿名 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT US
Guidoor Media 編集部
Guidoor Media編集部は、日本の文化や観光に特化したWebメディアです。日本の文化や歴史、観光地情報、アート、ファッション、食、エンターテインメントなど、幅広いトピックを扱っています。 私たちの使命は、多様な読者に向けて、分かりやすく、楽しく、日本の魅力を発信し、多くの人々に楽しんでいただくことを目指しています。 私たち編集部は、海外在住のライターや、さまざまなバックグラウンドを持つクリエイターが集結しています。専門知識と熱意を持って、世界中の人々に日本の魅力を伝えるために日々努めています。