京都 蔦屋書店(京都髙島屋S.C.[T8]5F)で、画家・武内雄大の個展「After the Constellations」が11月19日(木)まで開かれています。
出発点は、三島由紀夫の長編『禁色』の一場面です。そこから「生きるための物語」という問いを引き出した武内は、夜空の星と星を結んで星座を見出してきた人間の営みにならい、「点と点を繋ぐ」行為を手がかりに、現代の物語のあり方を探ります。
「星」「身体」「物語」をテーマにした、鉛筆、水彩、油彩による新作約15点が並びます。同店の開業3周年記念企画のひとつです。
出発点は『禁色』第十三章「慇懃」
着想のもとになったのは、『禁色』第十三章「慇懃」です。同性愛者でもある中年の既婚男性・鏑木が、自分に関心を持たない美青年・悠一を口説き落とす場面が描かれています。
鏑木は比喩を尽くして悠一の美しさを語り、悠一を映し出す鏡となります。悠一はそこに現れた自分自身に魅了され、やがて鏑木に身をゆるします。
人は物語によって自己をかたちづくり、肯定し、時系列を整理しながら生きている。そう考える武内にとって、鏑木が語った「悠一の物語」は、自己肯定を欲望にまで昇華させたものです。悠一を時系列から解き放ち、永遠の存在として描き出してもいます。武内はこれを、「生きるための物語」の最たる例と捉えています。
自刻像に光を当て、月の満ち欠けを描く


本展の作品群は、自身の身体や主体を、星や天体と重ね合わせています。中心となるのは、自身をかたどった彫像、つまり自刻像を正面から描いた連作です。像に当てる光の方向を少しずつ変えて描き分けることで、月の満ち欠けを表しています。
武内が本展に寄せて引く『禁色』の一節は、夜明けの光と夜の暗がりの境に浮かぶ悠一の顔をたたえるものです。光と闇の境に顔が浮かぶというイメージは、満ち欠けを描く連作と通じ合うようにも見えます。
2026年の作品には、木製パネルにジェッソを施し、鉛筆と透明水彩で描いてニスで仕上げた《棒(PO)点(TA)途(TO)》(1167×910mm)があります。キャンバスにアクリルと油彩で描いた《Yuichi#4》《Yuichi#5》もあり、その作品名は悠一と同じ響きを持っています。
物語を持ちにくい時代に、星座を結び直す
武内は、現代の情報社会では、「生きるための物語」を持つことの難しさと大切さが、ともに増していると感じています。
断片的な情報は絶え間なく届きますが、それが自分にとって何を意味するのかは、自分で考えるしかありません。SNSで他人の人生と自分を比べることも日常になりました。かつて人々を包んでいた大きな物語は解体され、一人ひとりが自分の物語を持つよう求められています。
武内が象徴として選んだのは、星座と天体です。神話や占い、言い伝えを通して、過去・現在・未来を読み解く物語を担ってきた星座は、科学が世界の仕組みを明らかにするにつれて、その役割を失っていきました。散らばった点に線を引き、そこに意味を見出す。この根源的な行為に、武内は現代の物語の手がかりを求めています。
作家について

武内雄大(たけうちゆうだい)
武内雄大は2000年、埼玉県生まれです。2018年から2021年まで、彩光舎美術研究所で油絵を学びました。光と闇が交錯する画面に、現代を生きる個人の孤独や欲望、アイデンティティを描いてきました。
星は以前からの関心でもあります。2024年の個展「ふらふらするもの」は、「惑星」の語源にちなんだタイトルでした。惑星の動きに自分の心を重ねてきた人々の営みを主題にしています。
2026年にはTAKUSOMETANI GALLERYで個展「Blinking Bodies」を開催しました。同年はソウルのWHITESTONE GALLERY Seoulでのグループ展「遊泳魚」にも参加し、ART FAIR TOKYO 2026にはTAKUSOMETANI GALLERYから出展しています。2024年には上野の森美術館大賞展に入選しました。近年は、自身のアイデンティティをテーマにした油彩・水彩作品で支持を集めています。
開業3周年の京都 蔦屋書店で
京都 蔦屋書店は2023年10月に開業し、2026年10月17日に3周年を迎えました。本展は、「アートと文化の『伝統と最先端』が共振する場」という開業時のテーマに立ち返る記念企画のひとつです。
展示作品は販売の対象となっており、アートのECプラットフォーム「OIL」でも11月19日(木)20時まで取り扱います。
一冊の小説に描かれた言葉の鏡から、夜空の星座へ。『禁色』の一節をきっかけに現代の物語について考えながら、ばらばらになった星座をもう一度自由に結び直すように、展示を楽しんでほしい。武内はそう呼びかけています。






















展覧会名:武内雄大 個展「After the Constellations」
会期:2026年10月31日(土)〜11月19日(木)
時間:11:00〜20:00
会場:京都 蔦屋書店 5F アートウォール(京都府京都市下京区四条通寺町東入二丁目御旅町35 京都髙島屋S.C.[T8]5F)
入場:無料
主催:京都 蔦屋書店
販売:会場展示作品は10月31日(土)10:30より販売(プレセールスの状況により会期前に販売終了している場合があります)。OIL:11月3日(火・祝)10:30〜11月19日(木)20:00
問い合わせ:075-606-4525(営業時間内)/kyoto.info@ttclifestyle.co.jp
詳細:京都 蔦屋書店 特集ページ