全国初の「美術博物館型」郷土館 | 美と暮らしをつなぐ、足立区立郷土博物館がリニューアルオープン

館内展示風景。琳派の屏風絵と展示室。

東京都足立区にある「足立区立郷土博物館」が、2025年4月26日にリニューアルオープンしました。これまで民具や歴史資料を中心に地域文化を紹介してきた同館は、新たに“美術博物館”としての機能を加え、全国でも類を見ない新しいスタイルの博物館として生まれ変わりました。

改修の契機となったのは、2009年に区内で発見された琳派絵師・村越向栄の屏風作品。これを皮切りに、江戸時代の文人たちとの交流記録や美術品が数多く見つかり、足立区は「美と知性の宝庫」と評されるようになりました。2年4か月にわたる大規模改修を経て、美術品を適切に保管・展示するための最新設備が整えられました。

1分でわかるこの記事
  • 東京都足立区立郷土博物館が、2025年4月26日にリニューアルオープン。
  • 全国初となる「美術博物館型」の郷土博物館として、美術品の本格展示をスタート。
  • 江戸から続く千住地域の文化と、美と暮らしをつなぐ常設展示が新たに公開。
  • リニューアル記念特別展「千住・足立の文化遺産展 前期『香りたつ琳派の美』」を開催中。

暮らしと美術をつなぐ常設展示

新設された美術品展示スペースでは、江戸から続く千住地域の文化背景を紹介。千住地域は陸運と水運の拠点として繁栄し、商人たちが文人たちと交流を深めたことで独自の文化を築きました。これらの歴史を、季節ごとに作品を入れ替えながら紹介し、訪れるたびに新たな発見ができる仕掛けとなっています。

リニューアル記念特別展『香りたつ琳派の美』

千住・足立の文化遺産展ポスター。菖蒲の絵。

リニューアルを記念して、「千住・足立の文化遺産展 前期『香りたつ琳派の美』」が開催中です。村越向栄の「四季草花図屏風」など、足立ゆかりの琳派作品が初公開されています。また、ゴールデンウィーク期間中の入館料無料や、ワークショップ、クイズラリーなどのキャンペーンも実施され、多くの来館者で賑わっています。

「千住・足立の文化遺産展 前期『香りたつ琳派の美』」

リニューアルオープンを記念して開催される特別展「千住・足立の文化遺産展 前期『香りたつ琳派の美』」では、地域に根付いた美術文化の豊かさを紹介します。本展は、日本で最も権威ある美術雑誌『國華』(令和5年5月20日発行、第1531号)で特集された「千住・足立の文化遺産」をもとに構成。村越向栄作の屏風作品を初公開し、千住・足立に息づいた琳派絵師たちの華やかな作品群を中心に展観します。

『香りたつ琳派の美』 展示構成

村越向栄作『四季草花図屏風』の展示作品。
初披露
村越向栄 四季草花図屏風(むらこしこうえい しきそうかずびょうぶ)
  • 文化遺産調査のはじまり
    2009年、千住の旧家で村越向栄作《十二カ月花卉図屏風》が確認されたことをきっかけに、区制80周年記念事業として「文化遺産調査」が本格化。10年以上にわたる調査で、足立の豊かな美術文化が明らかになりました。
  • 千住・足立の文化の成熟と生活への定着
    江戸時代後期、俳人・絵師の建部巣兆が谷文晁や酒井抱一らと交流し、千住・足立にも文人文化が根付いていきました。彼らの影響を受けた絵師たちは、地域の暮らしの中で作品を手掛け、調度品として広く受け入れられました。
  • 村越向栄の作品に見る生活文化
    千住の琳派絵師・村越其栄の子である村越向栄は、父から琳派の技法を学び、地域の教育者としても活動しながら、多くの掛軸や屏風を手掛けました。こうした「千住の琳派」の活動により、江戸琳派の流れは明治時代の地域文化にも脈々と受け継がれています。

会期中は一部作品の入れ替えもあり、何度訪れても新たな発見ができる工夫が施されています。
後期展は令和8年2月に開催予定です。

足立区立郷土博物館 概要

足立区立郷土博物館のリニューアル後の外観写真。
  • 所在地:東京都足立区大谷田5-20-1
  • 開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
  • 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
  • 入館料:一般200円(高校生以上)、団体割引あり。70歳以上、障害者手帳保持者および介助者は無料。第2・3土曜日は無料公開。
  • 詳細情報:公式サイト

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Taro Okazaki
「Guidoor Media」の立ち上げに携わり、日本の文化・歴史・観光を中心に執筆。オーストラリアでの出版社や教育機関での勤務経験を経て培った国際的な視点を活かし、日本の多様な魅力を国内外に発信しています。 文章では、地域の魅力を分かりやすく伝えることを心がけ、アートでは感情や記憶を色彩と形で表現しています。 趣味はVtuber、アニメ、音楽など。日々の好きなものが創作の原動力になっています。