五輪で世界が注目!『スカジャン』発祥の地「横須賀・ドブ板通り」でその歴史と魅力を聞いてきました!

スカジャン発祥の地横須賀ドブ板通りでスカジャン絵師横地広海知さんに話を聞いてみました

2020東京五輪大会に出場した難民選手団の選手のひとりが投稿した1枚の写真が世界的な話題になりました。

それは、神奈川県横須賀市にあるドブ板通りが発祥の地とされる日本のファッションアイテム「スカジャン」をまとった写真でした。

みなさんはスカジャンにどんなイメージを抱いていますか?「派手」「いかつい」「芸人さんが着ている」?

インパクトの強い刺繍の柄で派手なイメージがあるスカジャンですが、知られざるその歴史と生誕までのルーツには奥深いものがあります。

一躍世界から注目を集めた日本伝統のファッションアイテムのスカジャン。今回はその魅力に迫ります!

横須賀で活躍するスカジャン絵師・横地広海知さんのスカジャンコレクション
スカジャン絵師・横地広海知さんのスカジャンコレクション

ゴージャス、エクセレント、クール… 世界からスカジャンへの賞賛が止まない

引用:Yusra Mardini 公式Instagram

2020東京五輪大会の公式ライセンス商品として話題になったスカジャン。

スカジャン発祥の地である横須賀・ドブ板通り商店街で独自に商品開発された五輪オリジナルのスカジャンです。2020東京五輪大会のカラーである紺色をベースに、背中には典型的なスカジャン柄である龍と虎の刺繍とJAPANの文字、胸には大会エンブレムが取り込まれたデザインです。

今大会に出場した難民選手団のひとり、シリア出身の競泳選手ユスラ・マルディニさんが、スカジャンを身にまとった自身の姿をSNSに投稿し一躍話題となりました。

「JAPAN」の文字と華やかな刺繍がほどこされたこのスカジャンは世界中から注目され、「めちゃくちゃいい!」、「どこで買えるの?」、「私も欲しい!」など多くのコメントが集まりました。

2020東京五輪大会の公式アイテムに選ばれたオリジナル横須賀「スカジャン」
2020東京五輪大会スカジャン

画像出典:横須賀本町どぶ板通り商店街WEBサイト

そもそもスカジャンとは? その由来と歴史

1960年代ごろからスカジャン(Sukajan)と呼ばれるようになったと言われており、その由来についてはいくつかの説がありますが、最も有力な説は「横須賀ジャンパー」の略だという説です。

よく混同されがちですが「スタジャン」は「スタジアムジャンパー」の略です。シルエットは似ていますが、素材やデザインなどが異なり、そもそもの歴史的背景、出自が違います。

また、同じように比較される「ベトナムジャンパー(ベトジャン)」と呼ばれる、ジャンパー本体が黒やグリーン一色の、ミリタリーテイストの強い印象のジャケットもあります。

横須賀で活躍するスカジャン絵師横地広海知さんのオフィスに飾られている、スカジャンコレクションの一部。美しい伝統柄や「YOKOSUKA」の刺繍が並んでいる。

スカジャン絵師である横地広海知さんに聞いてみた

今回Guidoor Media編集部は、スカジャン発祥の地・横須賀のドブ板通り商店街で、スカジャン絵師として広く地域とも繋がりを持ちながら活躍されている、横地広海知(よこち ひろみち)さんにお話を伺いました。

スカジャンの探求者!横須賀を中心に活躍している横地さん

横地さんはドブ板通りに自らデザイン事務所を構え、「スカジャン絵師」として活躍しています。スカジャンの伝統と歴史を大切にしながら、最新のデジタル技術を駆使し、今までにない新しい横須賀・ドブ板通りならではの刺繍柄を生み出しています。

スカジャンの伝統柄と歴史・文化の継承を意識しながらつくりだされる横地さんならではのデザインは、スカジャンの新たな魅力を世界に発信し続けています。

横地広海知(よこち ひろみち)|スカジャン絵師・クリエイティブディレクター

1981年愛知県名古屋市出身。画家である父の留学に伴い、小学1年時一年間をパリで過ごす。神戸大学大学院で認知心理学と(結果的に)デザイン基礎論を学ぶ。面白法人カヤックでプランナー・ディレクターを経験し独立。イラストから専門学校設立などまでさまざまな制作に関わり、上流工程から制作業務まで幅広く手掛ける。クリエイションのゴールは暮らし作りと考え、近年は居住地横須賀で積極的に地域活動を行う。還暦スカジャン「還ジャン®」の柄デザインをきっかけにスカジャン絵師として活動を開始。

スカジャンの魅力を語る、横須賀で活躍するスカジャン絵師横地広海知さん。

スカジャンのルーツにある「戦争とスーベニアカルチャー」

現在の形のスカジャンは1947年頃に横須賀で作られ始めたと言われています。そのルーツには戦後のスーベニアカルチャー(お土産文化)が大きく関わっているとされます。

第二次世界大戦後、日本に駐留していた米軍などの兵士たちに向け、家族や恋人に持って帰るためのお土産に買ってもらおうと様々な品が作られました。

中でも、現地や母国で待つ恋人のためのギフト(Sweetheart Souvenir)は基地の町の人々にとっては貴重な収入源だったといいます。

例えば、上質の素材を使っていなくても、手間を掛けている、豪華に見えるような装飾が試行錯誤され、それらのお土産は作られました。そんな装飾技法の1つが刺繍だったのです。

今では、スカジャンのみとなった横須賀の刺繍柄のお土産ですが、当時はクッションカバー・フォトアルバム・ネクタイ・ハンカチなど様々なものに刺繍が施されていました。

スカジャン刺繍は戦後の日本でまだ物資が不足している中でも、なんとか物を売って明日の糧にするために必死に考えられ、作られたものだったのです。

今回お話を伺ったスカジャン絵師の横地さんによれば、特にジャケットがお土産の中心となったのには、米兵のカスタマイズカルチャーが影響しているといいます。戦時中から米兵の中では、制服の裏地などに思い思いの刺繍を入れて楽しむ文化があり、それが刺繡を入れたジャケットを戦地のお土産にする「スーベニアジャケット」につながっていったのだろうということです。

第二次世界大戦後の横須賀米軍基地でも、当初は駐留していたアメリカ軍兵士たちがテーラーショップや職人に注文し、各々が持ち込んだ落下傘の生地(当時はシルク)やウールの毛布などをジャケットに仕立ててもらい、所属部隊や基地などのエンブレムなどを入れていたようです。そこに東洋らしい虎・龍、アメリカの象徴である鷲などを刺繍していくことでスカジャンの形が出来上がったのではといわれてきました。

このような刺繍入りのスーベニアジャケットのカルチャーは韓国・ドイツなどでも独自のジャケットとして形になりました。特にベトナム戦争が行われたベトナムで作られたジャケットはベトジャンと呼ばれ独自の発展を遂げました。

横地広海知(よこち ひろみち)さんのスカジャン資料「ミリスマ」No.10 特集:戦争土産 ~スーベニールジャケット~の表紙
横地広海知さんのスカジャン資料 雑誌「ミリスマ」No.10 特集:戦争土産 ~スーベニールジャケット~の表紙

「スカジャンの全てを理解する」初代スカジャン絵師として日々高みを目指す横地さん

横地さんは、スカジャンのみならず横須賀の歴史、文化、風土、「当時の人々がどういう生き方をしていたのか?」を意識し、想いを巡らせてスカジャンと向き合いデザインを作っています。

横須賀を愛し、スカジャンを誰よりも大好きでいたいという横地さん。スカジャンの魅力の発信し、次の時代へとスカジャンカルチャーを繋いでいく、そのためには自分が誰よりもスカジャンを理解していることが必要だと考えています。

横地さん:ドブ板通りはスカジャン発祥の地です。しかし、私がこの通りで仕事を始めた当初、スカジャンが「お土産」として根付き認知されている一方で、「ファッション」としての魅力の探究や、工芸品として柄の意味や作り方の研究、歴史を発信し文化的価値を保存することへの意識はそこまで高くありませんでした。

そんな現状を鑑みると、このままでは、ゆくゆくはスカジャンカルチャーが死んでしまうのではないかと危惧しました。

もともと私は若い時からファッション、服がとても好きでした。若くてお金がない時期でも、ビンテージやこだわりの意匠が凝らしたものなど、高くても自分がかっこいいと思う服をどうやってでも着ていたかったタイプです。

ファッションや服がどうしようなく好きな人間だからこそ感じられる、伝えることができるスカジャンの良さや、魅力もあると考えています。そんな想いでお土産や飾り物ではない、ファッションとしてのスカジャンの着こなしや新しい商品展開を日々考えています。

横地さんはスカジャン愛と研究のためビンテージなアイテムなど資料を数多くコレクションしている

お土産ではなくファッションとしてのスカジャンを提案

横地さんは、スカジャンの伝統を受け継ぎ、研究し、大切にしながらも、これまでの枠組みにとらわれない、新たなスカジャンの魅力を生み出し、次の世代へと紡いでいこうとしています。

スカジャン絵師横地広海知さんのコレクションの1つ、シルバーのアニマル柄が入ったスカジャン。

作業場でご自身のスカジャンコレクションを解説する横地さん

横地さん:これからどんどん新しいスカジャンの着こなし、年齢などにもとらわれないコーディネートなどを提案していきたいです。

みんなのイメージの中にある定番のスカジャンスタイルだけではなくて、本当はスマートなスタイルや、モード的なもの、スポーティーやかわいいスタイルなど様々な着こなしがあります。

形、素材、柄など、本来スカジャンはもっと楽しめる要素がたくさんあるんです。スカジャンの伝統、ビンテージは大事にしながらも、新しいスカジャンの定義を作り育てていきたいと考えています。

そのためにはどこの誰よりもスカジャンのことを勉強して、日々考えている必要があると思っています。私自身が問答無用でスカジャンがかっこいいから着てるし、その想いでスカジャンを作っています。

スカジャンというファッションアイテムはハードルは高いものなのは確かだと思います。誰でも、いつでも、どこでも着れる服ではないですから。

面接や結婚の挨拶なんかにはちょっと着ていけないですしね(笑)

それに着こなし方、着る人によってはやっぱりちょっとイカつく、怖そうにも見えてしまいますよね。それでも私は毎日、どこでもスカジャンを着ていますけれど(笑)

でも、だからこそスカジャンは最高にかっこいいと思います。

スカジャンとセーラー服の襟とのコーディネート例。背中の龍の刺繍とセーラーの襟の合わせ方が斬新でかわいい。
セーラー(水兵さん)服の襟とスカジャンのコーディネート例。スカジャンファッションの可能性はさらに広く深い。

「柄は魔法!」スカジャンの伝統柄とその奥深さを伝えたい

スカジャンを着るということは柄を身に纏(まと)うということ。スカジャンの刺繍には神聖なパワーがあり、それを感じるという横地さん。

スカジャンを着た横地広海知さんの背中には伝統柄の鷲と龍の刺繍が。
それぞれの「柄」の持つ意味と人の思いがこもった「刺繍」・それらを纏うことでパワーが宿ると語る横地さん

横地さん:刺繍という縫う行為、人の手間がかかっているそれには祈りにも似た、作る人の気持ちが込められています。ひとつひとつの柄にも意味があり、それが刺繍されたものを身に纏う。つまり柄を身に纏う。当然それには特別な意味、想いが生まれてきますよね。

スカジャンはよく、「すごい派手ですね!」と言われますが、もともと世界的に人類はみんな柄が大好きなんだと思っています。世界中の文化に柄を見ることができます。日本だってもともとは古くから様々な場面で柄が使用されてきましたし、着物や身の回りのものなどにも柄が好まれ、日々の生活の中に柄が取り込まれていました。

だからスカジャンの柄は本来異質なものではないですし、世界中に愛してくれる人がいるのだと考えています。

缶バッジなどのスカジャン柄アイテムも開発し展開中!

本格的なスカジャンの価格帯は数万円から十数万円と、そのお値段は決して安くはありません。しかし、それにはもちろん理由があります。その特徴的な刺繍に多くの職人の手間が掛かっているからなのです。

スカジャンは高いから本物を気軽に誰でも買えるわけではない。

そのため、横地さんはスカジャンの良さを誰にでも知ってもらえるよう、そして新たに興味を持ってもらおうと新しいアイテムの開発もしています。手に取ってもらいやすさと、購入しやすい価格帯を意識して作られたオリジナルの缶バッジやピアスなどです。

こちらはドブ板通り商店街でも販売されており、お土産としても評判も良いそうです。これでまずはスカジャンの柄の良さを知ってもらい、興味を持ってもらいたい。そして、実際のスカジャンを手にとって、本物の柄を見てもらい、その良さをより多くの人たちに知ってもらいたいと横地さんは考えています。

「スカジャンを着ていなくても、いつでもスカジャン柄を身に纏ってもらいたい」という想いも込められています。

今までのスカジャンのイメージを一新する、スカジャンとの出会いが新しいあなたの魅力の発見にもきっとつながるはずです。

スカジャン絵師・横地広海知(よこち ひろみち)さんがデザインしたスカジャンをまとった猫の「ドブ板通りオリジナルスカジャンピンバッジ」
横地さんがデザインした人気のスカジャン柄をまとった猫が可愛い「ドブ板通りオリジナルスカニャン缶バッジ」

スカジャン発祥のドブ板通りは横須賀でも特に異国情緒あふれる場所

ドブ板通りは日本とアメリカの空気感とカルチャーが融合した、異国情緒あふれる商店街です。スカジャンはもちろん、ミリタリーショップや、アメカジファッションからビンテージアイテムまで様々なファッションアイテムが集います。

また、レストラン、カフェ、バーなども軒を連ねており、横須賀のご当地名物の「ヨコスカネイビーバーガー」、「よこすか海軍カレー」、「チェリーチーズケーキ」といったラインナップ全てがドブ板通りで楽しめます。

横須賀は黒船とペリー来航など歴史、文化、そして伝統がある街。篠山紀信が山口百恵のPVを撮った昭和の良き時代の空気が残る街など、様々な一面を持ち合わせています。また、横須賀は実はストリートカルチャーが熱い街でもあります。

横須賀では若い世代を中心にヒップホップやダンス、スケボー、BMXなどのエックススポーツが盛んであり、ストリートカルチャーが自然と育まれてきた街でした。最近では世代や垣根を越えての交流が生まれ、新たな活動や企画が動き出しているそうです。今後の横須賀カルチャーにも益々注目です。

スカジャン生誕の地、横須賀市にあるドブ板通りの異国情緒あふれるメインストリート
スカジャン発祥の地、横須賀市にあるドブ板通りの夜の風景。

多言語観光情報サイトGuidoor:ドブ板通り マップと観光情報

住所:神奈川県横須賀市本町2-7

横須賀のおすすめ観光情報&観光スポットはこちら▼▼▼

多言語観光情報サイトGuidoor:横須賀ページ

スカジャンへのアツい想いが詰まったインタビュー全文は近日公開予定!

貴重なスカジャンコレクションと資料とともに、スカジャンの魅力と歴史を語る、スカジャン絵師・横地広海知(よこち ひろみち)さん。

横地広海知さんの横須賀との縁やスカジャンへのアツい想いや魅力をたっぷりと語っていただきました。インタビュー全文は近日公開予定です。ぜひお楽しみに!

【続きはこちら】インタビュー記事本編を読む

『スカジャン』発祥の地「横須賀・ドブ板通り」ギャラリー

この記事の画像ギャラリーはこちら

1件のコメント

スカジャンまじかっこいい!横須賀のスカだったって知らなかった😹
関東行けるようになったら横須賀いってどぶ板通り巡ってみます!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT US
Guidoor Media 編集部
Guidoor Media編集部は、日本の文化や観光に特化したWebメディアです。日本の文化や歴史、観光地情報、アート、ファッション、食、エンターテインメントなど、幅広いトピックを扱っています。 私たちの使命は、多様な読者に向けて、分かりやすく、楽しく、日本の魅力を発信し、多くの人々に楽しんでいただくことを目指しています。 私たち編集部は、海外在住のライターや、さまざまなバックグラウンドを持つクリエイターが集結しています。専門知識と熱意を持って、世界中の人々に日本の魅力を伝えるために日々努めています。