京都 蔦屋書店3周年記念展「resonance」 伊庭靖子、岩崎貴宏、金氏徹平ら現代美術家6名が問う「伝統と最先端」の共振

京都髙島屋S.C.[T8]の京都 蔦屋書店で、開業3周年を記念するグループ展「resonance」が10月24日に開幕しました。出展するのは伊庭靖子、岩崎貴宏、大西伸明、金氏徹平、佐々木類、フランシス真悟の6名。長年にわたり独自の表現を探ってきた現代美術家の作品を通して、店が開業以来掲げてきた「伝統と最先端」という主題をあらためて問います。会期は11月17日(火)まで、入場は無料です。

180本の展示を経て、原点の問いへ

2023年に開業した京都 蔦屋書店は、これまでに180本の展示を開催し、世代やジャンルを越えた表現を紹介してきました。芸術分野を幅広く扱う約6万冊の書籍に文具や工芸品、現代アートの展示を併せもつこの店が、開業時から志向してきたのは、伝統と最先端を「共振させる場」となることです。

3周年の節目に開かれる本展は、そのコンセプトに立ち返り、伝統と最先端はいかにせめぎ合い、あるいは調和しうるのかという問いを掲げます。鍵となる「共振」とは、異なる時間性や価値観が互いに作用し、新たな緊張や関係を生み出す状態のこと。過去と現在、未来を横断する6名の実践が、その問いを具体的なかたちで示します。

6名の作家

6名のうち半数が京都にゆかりをもちます。伊庭は京都市、金氏は京都府の生まれで、大西と金氏は京都市立芸術大学大学院を修了しています。一方でフランシスはロサンゼルスと鎌倉を拠点とし、佐々木は米国の大学院で学び、北欧や米国を中心に滞在制作に招かれてきました。

伊庭靖子|写真を介して描く

《Untitled 2026-10》Oil on canvas/50×60.6㎝/2026 Photo:Keizo Kioku ©MISA SHIN GALLERY

1967年京都市生まれ。クッションや陶器といった身近なモチーフを自ら撮影し、その写真をもとに油彩画を描きます。モチーフの質感や空気感を繊細にすくい取りながら、制作の過程で色彩・光・物質の関係を探ってきました。2019年に東京都美術館で個展「まなざしのあわい」を開催し、2022年には京都美術文化賞を受賞。米国のクリーブランド美術館をはじめ、国内外に多くの収蔵先をもちます。2026年制作の油彩に《Untitled 2026-10》があります。

岩崎貴宏|ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表

《Out of Disorder(Brushscape)》刷毛、洋金箔/H540×W640×D10㎝/2026

1975年広島県生まれ。2017年の第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で日本館代表を務め、2026年には第32回平櫛田中賞を受賞しました。近年もオーストラリアのNGV International、米国のポートランド日本庭園などで個展を重ねています。2026年の作品《Out of Disorder(Brushscape)》では、刷毛と洋金箔を素材に用いました。

大西伸明|型を取り、「オリジナル」を問う

《Tool box #4》樹脂に塗装/W37×D15×H20.5cm/2026 Photo:大河原光

1972年岡山県生まれ。自然物や身の回りの物を樹脂で型取りし、彩色して、複製や反転の構造を用いたオブジェやマルチプルを制作します。本物と見紛う質感の中にあえて透明な部分を残すことで、その「間(あわい)」を表し、「存在」や「オリジナル」とは何かを問いかけます。版画を学ぶなかで培われた発想は、並行して手がける版画作品にも表れています。2026年の作品に《Tool box #4》があります。

金氏徹平|量産されたイメージを組み替える

《Teenage Fan Club(2.5/L)》アルミ板にUVインクジェットプリント/127×100cm

1978年京都府生まれ。フィギュアや雑貨など、日常的なイメージをまとった物をモチーフに、現代社会で再生産され続けるイメージをリズミカルに反復・増幅させる作風で知られます。個々の物が本来の意味から切り離されて接続されることで、思いがけない動的な表現が生まれます。2025年には瀬戸内国際芸術祭に参加。森美術館、金沢21世紀美術館などに作品が収蔵されています。アルミ板にUVインクジェットプリントを施した作品に《Teenage Fan Club(2.5/L)》があります。

佐々木類|ガラスに「微かな懐かしさ」を留める

《植物の記憶-秋の窓-》ガラス、植物/キルンワーク、インクルージョン/H840×W440×D19㎜/2025、Bullseye Glass Co. / Hanmi Meyer

1984年高知県生まれ、石川県を拠点に活動しています。保存や記録が可能な素材としてガラスを用い、自身がいる場所で知覚した「微かな懐かしさ」のありようを探ってきました。米国コーニングガラス美術館のRakow Commission 2018に選ばれ、国際芸術祭あいち2025にも参加。2025年の《植物の記憶-秋の窓-》は、ガラスと植物を素材とする作品です。

フランシス真悟|見る角度で変わる光と色

《Ring of Violet》2025/Oil on canvas/122×122cm Photo: Keizo Kioku ©MISA SHIN GALLERY

1969年米国カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。絵画における空間の広がりや精神性を探求しています。幾層にも重ねた青の抽象画や深い色調のモノクローム、特殊な素材によって見る角度で光と色が変化する「Interference」シリーズで知られます。銀座メゾンエルメス フォーラム(2023年)や茅ヶ崎市美術館(2024年)など、国内外で数多くの展示に参加しています。2025年の油彩に《Ring of Violet》があります。

物と時間をめぐる、6通りの手つき

伊庭、大西、金氏の3名は、日常の物を制作の起点にしている点で共通します。ただし向き合い方は三者三様です。伊庭は物を写真に収めてから絵画に移し、大西は型を取って複製をつくり、金氏は量産された物のイメージを反復させて組み替えます。

佐々木はガラスを記録し保存するための素材として扱い、フランシスの「Interference」シリーズは鑑賞者の立ち位置によって光と色を変えます。岩崎の《Out of Disorder(Brushscape)》は、刷毛という道具に金箔を組み合わせた作品です。

描く、写す、増やす、留める。手法も素材も異なる6人の作品は、それぞれ別の時間の流れを抱えています。一つの空間に並んだとき、それらがどのような緊張や響き合いを生むのか。展覧会名の「共振」は、その比較の中で確かめられるものでしょう。

京都 蔦屋書店 グループ展「resonance」開催概要

展覧会名:伊庭靖子、岩崎貴宏、大西伸明、金氏徹平、佐々木類、フランシス真悟 グループ展「resonance」

会期:2026年10月24日(土)〜11月17日(火)

時間:11:00〜20:00(最終日は18:00まで)

会場:京都 蔦屋書店 5F エキシビションスペース(京都府京都市下京区四条通寺町東入二丁目御旅町35 京都髙島屋S.C.[T8]5・6階)

入場料:無料

作品販売:10月24日(土)11:00より店頭にて販売。プレセールスの状況により、販売を終了している場合があります。

主催:京都 蔦屋書店

協力:ANOMALY、ART FRONT GALLERY、MISA SHIN GALLERY、MA2 Gallery

お問い合わせ:京都 蔦屋書店(075-606-4525)

特集ページ:京都 蔦屋書店「resonance」特集ページ

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プロジェクト統括・編集長:岡崎 太朗

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