「深大寺そば」の魅力を探るため、そば好きのGuidoor Media(ガイドアメディア)編集部が調布深大寺周辺の深大寺そば屋を巡りお話を伺ってきました。今回は戦後から深大寺で商いを始めたという『松葉茶屋』さんを取材してきました。
『松葉茶屋』さんは、深大寺そば組合の取り組みとして地元の子供達に「そば学習」や、そば打ちを毎年教え、深大寺の歴史と文化を伝えることに力を入れています。
松葉茶屋のこだわり「深大寺そば」
松葉茶屋さん:松葉茶屋のおすすめ深大寺そばは「天ざる」( 1,530円)と「辛味大根そば」( 1,330円)です。そば粉は、いろいろな季節ごとにベストな産地からとりよせています。
夏場は、栃木と北海道、ちょっと前までは千葉の新そばなどをどこよりも早く仕入れています。その時の良い「そば」をブレンドして作るのが、「松葉茶屋」の八割・十割そばです。
「天ざる」の天ぷら具材は海老、キス、茄子、カボチャ、オクラの5種類です。天ぷら粉2種類をブレンドし、からっとあがるように工夫しています。通年、具材は変えていません。
昔はししとうを使っていたんですが、今はオクラを使っています。ししとうは辛みや苦味が苦手な人もいますが、オクラのほうが皆さんの受けがいいですね。
「辛味大根そば」に使っている辛味大根は、福島県会津の農家さんから直接取り寄せています。夏場だけ調達は調布の市場からです。
最初はお客さんに、「つゆ」に入れる大根をおろしがねで、おろしてもらっていたのですが、意外とめんどくさいという声があり、今は店で、すってからお出ししています。
もちろん辛味大根は辛いんですが、独特のうまみが出るんです。これがすごく「つゆ」に合うんです。
うちの「つゆ」はよその店よりは甘さは控えめかもしれないですが、辛すぎもしないバランスのよい味です。
戦後、祖母の代からはじまった「松葉茶屋」
松葉茶屋さん:初代は祖母で、私が三代目、うちの長男で四代目になります。
うちはもともとは違う場所で、アイスキャンディー・お菓子などを扱う売店をやっていたんです。祖父が戦争で亡くなり、東京大空襲で焼かれたあと、こちらにつてがあって逃げてきた祖母が腕一つで立ち上げた売店でした。
戦後、お寺さんにこっちに来ないかと言われたこともあり、植物公園ができる前頃に売店を辞め、ここでそば屋を始めました。当時は地元農家の方々を中心にそば屋への進出気運が高まっていた頃の話です。
松の木の葉っぱがいっぱいある場所だったことから屋号を「松葉茶屋」にしました。はじめは屋根だけがあるような店でした。
舗装道路がなく車もない時代、子どもだった私は、リアカーでビール運びを手伝っていた記憶があります。
その後、店は祖母から父が引き継ぎました。私は店を継ぐことは考えていなかったのですが、祖母が亡くなったことをきっかけに、「ここを守らなければ」と思いましたね。それから、そば打ちの修行を一から教わり、今に至ります。
松葉茶屋さん:以前、お寺の大きなコナラの木が店を突き抜けて立っていました。ところが枯れてしまったため、お寺と話し合って切ることとなったんです。上部だけを断裁して、残った部分を今もそのまま店のシンボルとして残しています。
23年~24年前頃、店を建て替えました。その前はふきさらしで、普通に寝泊まりできるのは母屋だけでした。
当時は泥棒がよく入ったものですが、現金は店に残していないので取るものがない。そこで泥棒は仕方がないので日本酒だけを飲んで帰った、といった経験もありました(笑)。
昭和30年代~40年代は深大寺観光がブームになり、「深大寺そば」もまた脚光を浴び多くの人が訪れるようになります。ゆでてストックしていたそばを出しても、みんな美味しい美味しいと食べてくれていた時代もありました。
昭和の終わり頃に私が店を継ぎ、やはり手打ちでなければダメだなと考えました。当時の深大寺そば屋は4~5軒くらいでしたが、その後、そば屋も増えました。昔のように出せばなんでも売れるという時代ではないので、今は三代目~四代目になったそば屋みんなが切磋琢磨しながらがんばっています。
次世代へ伝えていく『松葉茶屋』深大寺の魅力と「そば文化」
松葉茶屋さん:深大寺そば組合が毎年11月末ごろに企画している「深大寺そば祭り」は、各店でミニ盛りそばを500円で提供しています。
これだと一日2~3軒は食べれます。スタンプラリーになっている絵馬を購入して全店制覇すると、「オリジナルそばちょこ」などを数量限定で差し上げています。おかげさまで毎年人気で早い者勝ちです。
釈迦堂白鳳仏(釈迦如来像)が国宝、重要文化財の梵鐘、深沙大王堂は縁結びの神様、と深大寺には観光資源が多くあります。
奥多摩に行けばそれなりにありますが、新宿から京王線で15分~16分で着く場所に、これだけ自然が多いところはなく、湧水も溢れ、東京なんだけど東京じゃない、みたいな所はありません。
子どもの頃は、田舎臭くていやだったのですが今、大人になり、こういうところで育ったことは大変よかったと、誇りに思っています。ここに住む私たちは、本当にこの地を愛しているのです。
深大寺に咲く「そば」の花
松葉茶屋さん:深大寺そば組合が中心となり、地域の小学校で子どもを対象に毎年そば学習を実施しています。ここだけの企画です。子ども達が地元の特産・名物を知り、深くかかわることが大事だと考えています。
地域にそば畑を抱え、そばを育てることから始め、収穫、そば打ち、給食で食べることまで行っているんです。これは何十年も続けています。
そばを育てることは、がんばれば他の場所でもできるかもしれませんが、そば打ちまではなかなかないのではないでしょうか。子どもがそばを打てば、上手くいかず、めっちゃくちゃになってしまうこともありますが、自分が汗水たらしてつくったそばは格別のようです。
私が教えた子どもでそば屋になった子もいます。その子に「あの時の先生だよ」と言えたことはそば屋冥利につきますね。
松葉茶屋 店舗情報
住所 :東京都調布市深大寺5-11-3
電話 :042-485-2337
営業時間:10:00〜17:00
定休日 :月曜日 (祝日の場合は翌日振替)
駐車場 :なし
ペット :可 ※外席のみ
公式WEB・SNS: 松葉茶屋 Instagram X(旧Twitter)
公式アプリ : IOS / Google
深大寺そばマップ 松葉茶屋
【松葉茶屋の詳細情報】
【深大寺そば特集】
6月の平日に訪れました。そばはおいしかったのですが、店員さんの接客がいまいちでした。すいていたので、店員さんの方たちが暇をしていたのか、ずっとみられている感じがしました。ボォーと、立っていて、みているのに、水がなくなっていることに気づかない。なくなってきたら、水をどうですか?と声をかけますよね。もっとお客さんをみてほしいです。