Bunkamuraザ・ミュージアムで、高木由利子 写真展「Threads of Beauty 1995-2025 ― 時をまとい、風をまとう。」が2026年3月10日から3月29日まで開催されます。入場は無料。高木由利子にとって東京の美術館では初の個展であり、あわせてBunkamuraザ・ミュージアム現展示室で行われる最後の展覧会でもあります。
世界各地の伝統的な衣服をまとって生きる人々を、30年にわたり撮影してきた〈Threads of Beauty〉シリーズを軸にした本展は、「ファッションとは何か」という問いを、流行や消費だけではない視点から見つめ直す機会になりそうです。展示は約100点、8つのテーマで構成され、会期中にはトークイベントやサイン会、会場限定の販売企画も予定されています。
〈Threads of Beauty〉高木由利子が見つめてきたもの
今回の展覧会で中心となるのは、高木由利子が30年間にわたって撮り歩いてきた〈Threads of Beauty〉です。世界各地の伝統的な衣服をまとい生きる人々の日常を記録してきたシリーズであり、その集大成の中から精選した作品が展示されます。
高木は、このシリーズを民俗史的な記録としてではなく、被写体となった人々の「格好良さ」に惹かれて撮影してきたと説明されています。衣服を通して人の存在やアイデンティティを見つめる姿勢が、本展全体の核になっています。
また本展は、Bunkamuraが参画する「渋谷ファッションウィーク」との共催で開かれます。Bunkamuraはこれまでにも建築を使ったアートインスタレーションの企画を行ってきましたが、今回は写真家・高木由利子の〈Threads of Beauty〉に焦点を当てた写真展として開催され、会場構成は建築家・田根剛が担当します。渋谷という都市の文脈と、世界各地の装いを見つめる高木の視線とが交差する展覧会として位置づけられています。
約100点、8つのテーマで構成される展示

〈Threads of Beauty〉は「衣服」を超えて、人の存在に向かうシリーズ
本展で最初に投げかけられるのは「ファッションとは何か―。」という問いです。〈Threads of Beauty〉は、単に伝統衣装を並べて見せる展示ではありません。高木由利子は、衣服や人体を通して「人の存在」を撮り続けてきた写真家です。本シリーズはその中でもとりわけ長期間にわたる根幹的なプロジェクトとされています。
服は装飾やスタイルであるだけでなく、その人がどう生き、どう在るかを映すものでもある。その視点が、本展の写真を読むための入口になります。
同時に、世界各地の伝統服が日常生活の場から姿を消しつつある現状にも触れています。ただし、その変化を一方的に嘆くのではなく、現代の生活様式へ移行するうえでの自然な営みとして受け止めている点も印象的です。
失われつつあるものへの眼差しと、変化し続ける現実への理解。その両方を抱えながら、人と衣服の結びつきを見つめてきたことが、高木の写真の奥行きにつながっています。
約100点、8つの「Village」で構成される展示

本展は8つのテーマで構成され、それぞれの集積を「Village(村)」と呼ぶ構成になっている。展示作品は約100点。渋谷から12か国への世界旅行を思わせる構成となり、作品を順に追うだけでなく、複数の文化圏や時間感覚を往来するようになっていることがうかがえます。
ここで重要なのは、写真が一枚ずつ独立して置かれるだけではなく、まとまりとして空間に立ち上がるように設計されている点です。
作品の集積そのものを「Village」と呼んでいることからも、単なる作品紹介ではなく、ひとつの場として体験させる意図が読み取れます。写真を「見る」だけでなく、その背後にある風土や気配を空間ごと感じる構成に近いのかもしれません。これは展示点数の多さ以上に、本展の体験を特徴づける要素です。
布を生かした展示空間と、田根剛らによる会場構成

今回の会場構成は、田根剛、マキシム・セロン(ATTA – Atelier Tsuyoshi Tane Architects)が担当しています。
展示空間の大半を占める作品は、大判の布を支持体とし、KONBUと名付けられた布や泥染めコットンを用いた2種類のファブリックを使用。竹和紙にプリントされた作品が布に縫い付けられ、手仕事によって制作されています。
この構成は、本展の主題である「衣服」や「纏うこと」とも響き合い、写真展でありながら、支持体や素材そのものが前景化している点も注目です。
さらに、本展で使用されるアクリルボックスやカーペットには、ザ・ミュージアムの過去の展覧会で用いられてきた物品もリユースされています。作品、布、展示室、そして過去の展覧会の記憶が、ひとつの空間の中に重ねられていることも、今回の大きな特徴です。
「最後の展覧会」であること自体が、展示の一部になっている
本展は、Bunkamuraザ・ミュージアム現展示室で行われる最後の展覧会です。Bunkamuraは、「Shibuya Upper West Project」(2029年度竣工予定)における新施設への拡大移転を控え、代替施設での活動は継続するものの、現展示室での展覧会は本展が最後になります。約40年にわたり、東京渋谷の地で、アートとの出会いを紡いできた空間に入れる、節目の展覧会となります。
単に「最後だから記念の展覧会」という扱いにはとどまりません。空間を仕切る稼働壁を取り払い、これまで展示壁の内側に隠れていたコンクリート壁や空調ダクトがあえてむき出しにされるなど、本展示では、写真作品だけでなく、長年使われてきた展示室そのものの姿もまた見せる対象になっています。現展示室の履歴や質感を露出させながら終わりを迎える構成は、今回ならではでしょう。
渋谷という街と結びつく展示、新作映像も初公開

本展は「渋谷ファッションウィーク」との共催で開かれ、渋谷の街なかとも連動します。ハチ公前広場から始まる、高木の作品画像が配されたビルボードやフラッグをたどりながらBunkamuraへ至る導線が案内されています。展示室の中だけで完結するのではなく、街の風景の延長として本展を位置づけている点も特徴です。
さらに展覧会終盤では、高木がコロナ禍前の渋谷の人々を撮影し、〈Threads of Beauty〉と組み合わせた新作映像作品《同時多発的服飾 SHIBUYA × THE OTHER SIDE》が初公開。世界各地の伝統的な装いと、渋谷という都市に生きる人々の装いを並置することで、「格好良さ」とは何か?、アイデンティティとは?、それらが、いまここにある視点・問いとして立ち上がってくる構成になっています。
「格好良さ」の追求は、すなわちアイデンティティの探索でもあり、それは渋谷であれ、世界のどこであれ、さらには時代をも超える、いわば永遠の命題です。
Bunkamura 高木由利子 写真展 公式ページ
トークイベント、サイン会、森岡書店の特別出店
会期中の関連企画も充実しています。3月14日には小池一子、3月15日には高橋悠介を迎えたトークイベントが開催されます。ファシリテーターはARTnews JAPAN編集長の名古摩耶。会場はBunkamuraザ・ミュージアム展示会場内で、各回定員30名、参加無料、要予約です。
予約はArtStickerで受け付け、先着順と案内されています。参加者はイベント終了後、一般開場前に本展を貸切で鑑賞できます。
また、3月14日と15日の各日15時からは、高木由利子によるサイン会も開催されます。会場は森岡書店Bunkamuraザ・ミュージアム店内で、写真集購入者を対象に各日先着50名限定です。
あわせて森岡書店の特別出店では、amachi.とのコラボ商品、豪華特装版写真集、《Colombia, 2016》をもとにしたリトグラフ作品、漆皮作家・樋上純とのコラボレーション作品などが展示販売されます。


展示の中でも大きな存在感を放つコロンビアのシャーマンを撮影した《Colombia, 2016》。この度梅田版画工房とのコラボレーションにて新たにリトグラフ作品。エディション20部のみ特別販売。
[販売価格:165,000円(税込)※ED20/墨染め額装込/専用箱付き]高木由利子の作品を皮革にプリントし漆で塗り固めた、まるで太古の遺物のような箱。漆皮作家の樋上純とのコラボレーションにより特別に10個限定で制作。森岡書店Bunkamuraザ・ミュージアム店で販売。
[販売価格:110,000円(税込)]
高木由利子という作家をあらためて見る機会
高木由利子は、武蔵野美術大学でグラフィックデザインを学び、英国のTrent Polytechnicでファッションデザインを学んだのち、写真家へ転身しました。公式サイトでは、当初は風景やヌードを主題にしながら、やがてファッションブランドとの仕事にも携わるようになり、ディオールのアーカイブピースを独自の視点で捉えた作品群や、近年の〈chaoscosmos〉シリーズへと活動を広げてきた作家です。
その歩みを見ると、高木の写真は、単純にファッション写真でもドキュメンタリーでもありません。衣服、人体、自然現象を横断しながら、「人の存在」をどう写すかを問い続けてきた作家の仕事として読むことができるんではないでしょうか。今回の展覧会は、そうした高木由利子の歩みの中でも、もっとも長く続いてきたプロジェクトを中心に据えたものです。東京の美術館での初個展という事実以上に、作家の核に触れる展覧会として見ておきたい内容です。
基本情報
展覧会名
SHIBUYA FASHION WEEK 2026 Spring x Bunkamura
高木由利子 写真展 Threads of Beauty 1995‐2025 ― 時をまとい、風をまとう。
会期
2026年3月10日(火)〜3月29日(日)
※会期中無休
開場時間
13:00〜20:00(最終入場19:30)
会場
Bunkamuraザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura B1F
料金
入場無料
主催
渋谷ファッションウィーク
共催
東急株式会社、Bunkamura
企画制作
Bunkamura
会場構成
田根剛、マキシム・セロン(ATTA – Atelier Tsuyoshi Tane Architects)
問い合わせ
ハローダイヤル 050-5541-8600
- 会場はBunkamuraザ・ミュージアムで、ヒカリエホールではありません。来場前に会場名を確認しておくと安心です。
- トークイベントは各回定員30名、参加無料、要予約です。予約はArtStickerで受け付け、先着順で締め切られます。
- サイン会は3月14日、15日の各日15時から開催され、写真集購入者対象、各日先着50名限定です。
- 豪華特装版写真集は会場限定の抽選販売です。応募期間は3月10日から3月15日16時まで、抽選は3月15日16時から行われます。
- 最新情報はBunkamuraの展覧会ページや公式SNSなどで案内されます。来場前に最新情報を確認するのがおすすめです。
高木由利子

東京生まれ。武蔵野美術大学にてグラフィックデザイン、イギリスのTrent Polytechnic にてファションデザインを学んだ後、写真家として独自の視点から衣服や人体を通して「人の存在」を撮り続ける。近年は自然現象の不可思議にも深い興味を持ち、〈chaoscosmos〉というプロジェクトを映像を含め新たなアプローチに挑戦し続けている。





















