2019年11月17日(日)大阪、ドーンセンター(大阪府立男女共同参画・青少年センター)にて石牟礼道子『苦海浄土 わが水俣病』(1969年)を原作とした、一人芝居「天の魚」(てんのいを)の公演が行われます。
今回主催者たちの「一人芝居「天の魚」を関西で観たい!」という熱い想いから、約30年ぶりとなる大阪公演が実現しました。
一人芝居「天の魚」は約40年にわたり、全国各地で上演され続けられてきました。その上演回数は累計600回以上に昇ります。
一人芝居「天の魚」とは
石牟礼道子(いしむれ みちこ)の小説「苦界浄土」(くがいじょうど)をご存知でしょうか?
「苦界浄土」は1969年に刊行され、水俣病の現実の姿と人々を丹念に描き出された作品として絶賛されました。
その作品には多くの水俣病患者、家族の姿が描かれています。そんな「苦界浄土」の第四章『天の魚(てんのいを)』に、胎児性水俣病の少年と、彼を大切に育てているおじいさんが登場します。
その第四章『天の魚』を原作に京都生まれの新劇俳優、砂田明(すなだ あきら)がひとり芝居として構成し、演じました。1979年の初演から、砂田明が1993年に亡くなるまで全国で行われた公演は計556回を数えます。
砂田明が亡くなった後、しばらくは上演が途絶えていましたが、一人芝居『天の魚』を支えてきた川島宏知(かわしま こうち)などの俳優たちや、支援者らを中心に2007年に復活を果たします。その後また全国で上演され続けています。
12年前、川島は「まだ今の自分では水俣で公演をやれない。」と語っていましたが、2018年2月、ついに水俣での上演を行い成功させました。
川島宏知(かわしま こうち)
1946年高知県生。砂田明に演劇を学ぶ。砂田氏が1972年に水俣に移住してからは東京で舞台、映画、TVなど幅広く出演。
2006年から「天の魚」を継承、2018年2月には水俣で上演した。著書に『想憶のシンフォニー』(2017)共著に『水俣50年ひろがる「水俣」の思い』(2007)がある。
石牟礼道子(いしむれ みちこ)
1927年熊本県生。水俣に取材し『苦海浄土わが水俣病』(1969)を発表。水俣病を生きる人々の姿を描き、大きな衝撃を与えた。
『天の魚』(1974)『椿の海の記』(1976)などの作品を次々に発表。創作活動は水俣病の告発に留まらず、小説、随筆、詩歌など生涯にわたり続いた。2018年2月10日、没。
一人芝居『天の魚』で描かれている人々
Photo by Delcho Dichev from Pexels
「苦界浄土」、ひとり芝居『天の魚』に登場する水俣病に侵された人々。
彼らは水俣病患者、水俣病被害者、水俣病未認定患者としてだけではなく、ひとりのひと、誰かの家族であること。そして、「ひととひととのつながり」が丹念に、誠実に描かれています。
一人芝居『天の魚』は水俣病患者の物語として見ることもできます。それと同時に、とある家族の物語として見えてくることに気づかされます。
水俣病とは。病を抱えて生きるということは。そして健康とは何か?生きるとは何か?を強く問いかけてくる作品です。
川島は原作にある母と子の物語を生かし、ひとつの家族の暮らしぶりを描きくために、告発色の強かった砂田の台本に少し改変を加えているそうです。
ひとりひとりのささやかな暮らしぶりを表現することによって、「社会的問題に関心のある人たち。」だけではなく、「演劇的に成立させ、水俣病に意識のない人に観てもらいたい。」と川島は語っています。
30年ぶりとなる大阪公演。ぜひこの機会に観に行ってみましょう。
特別対談『「天の魚」の世界と、未だに終わらない水俣病』
2019年11月17日(日)
■15:45開場 16:00開始
公演に合わせて、長く水俣病と関わり続けている最首悟(さいしゅ さとる)と、自身が水俣病被害者でもある、おしたようこによる特別対談『「天の魚」の世界と、未だに終わらない水俣病』が設けられています。
自重度複合障害をもつ娘の誕生をきっかけに水俣病運動や障害者運動との関わりを深く、重ねてきた最首悟。
関西在住で自身が水俣病被害者でもあり、様々な発信を続けている、おしたようこ。
1956年5月1日、水俣病公式確認。そして1969年「苦界浄土」の刊行から半世紀が経とうとしています。
ぜひこの新しい時代に、終わらない水俣病について、病を避け病と無縁ではいられない人間、生きるといことについて、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
最首悟(さいしゅ さとる)
1936年福島県生。1976年に重度複合障害をもつ娘さんの誕生を機に、障害者への差別や偏見が未だに根深く残る社会に向けて発言を続けている。
1977年、第一次不知火海学術総合調査団に参加、1981年より第二次不知火海学術調査団の団長。著書は『水俣の海底から』(1991)『星子がいる』(1998)など多数。
おしたようこ
1974年兵庫県生。線維筋痛症友の会理事・関西支部長。不知火海沿岸地域に生まれ育った両親のもと、長年、関西で暮らす。
幼少時より原因不明の頭痛、倦怠感に悩まされ、主治医の紹介で阪南中央病院を受診したところ「胎児性水俣病のひとつのタイプなのではないか」と診断される。共著に『水俣50年ひろがる「水俣」の思い』(2007)がある。
「天の魚」大阪公演概要
場所:
大阪府立男女共同参画・青少年センター(ドーンセンター)
1階 パフォーマンススペース
日時:
2019年11月17日(日)
①昼の部:13:30開場 14:00開演
(※2019年11月14日現在満席)
●特別対談:15:45開場 16:00開始
※特別対談は午後の回ご観覧の方も夕方の回ご観覧の方も入場いただけます。
②夜の部:17:30開場 18:00開演
全席自由席。①②は各回入れ替え制。
※特別対談は午後の回ご観覧の方も夕方の回ご観覧の方も入場いただけます。
料金:
前売券:2000円
当日券:2500円
(※残席がある場合のみ発売予定)
事情割:1000円
詳しくは公式サイトひとり芝居「天の魚」大阪公演2019へ
一人芝居「天の魚」チラシはこちらから
ご予約は
追記:2019/11/14現在【夜の部18:00〜】のみ販売中。
チケットのお求めはオンライン、お電話からできます。予約時にお伝えする払込票番号をお近くのセブンイレブンにてお支払いください。
(※2019/11/14現在電話予約は受付終了しました。)
オンライン予約:
https://ten-no-iwo.1o0.jp/ticket/からご予約できます。
電話予約:
(※電話予約は受付終了)
お問い合わせ
「天の魚」関西企画
〒554-8799 大阪府大阪市此花区春日出北2-1- 9此花郵便局留今関惇
WEB:
ひとり芝居「天の魚」大阪公演2019
E-mail:
kansai.tennoiwo@gmail.com
Photo by Ryo Yoshitake on Unsplash
制作:
「天の魚」出前プロジェクト
協力:
最首塾 on the web
東京-水俣病を告発する会・季刊「水俣支援」編集部
主催:
「天の魚」関西企画
事務局:
問学研究会
資料・画像・情報提供:「天の魚」関西企画
ひとり芝居「天の魚」大阪公演2019
(本記事では敬称を省略させていただいております。)
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