比叡山の「縁」が繋ぐ新しい時代のチーム -インタビュー その3-

比叡山延暦寺の境内入口の様子。左右には木製の大きな柱が立ち、それぞれに「延暦寺」と「比叡山」と書かれています。奥には参道が続き、木々に囲まれた建物が見えます。道沿いには案内所や休憩所と思われる小さな建物があり、参拝者が歩いている姿も確認できます。周囲は緑豊かで、静かな雰囲気が漂っています。

新型コロナウイルスがもたらした困難な時期にあっても、多くの人々の心に希望と新たな視点をもたらした『ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展』。その成功の背後には、年齢や職業を超えた3人のキーパーソンの存在がありました。Guidoor Media編集部では、彼らに独占インタビューを行い、その模様を3回にわたってお届けしています。

1回目では企画の裏側や経緯、2回目ではアートディレクター山田晋也さんの独自の表現についてお伝えしました。そして今回、最終回では、これらの個性的なメンバーがどのようにして出会い、力を合わせてこの壮大なプロジェクトを成功に導いたのか、その「縁」について深掘りしていきます。

▼「ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展」の記事はこちら

新しい時代のチームはどうやって集まったのか?

— 今出川さん、村山さん、山田さんはどういう繋がりで集まったんでしょうか?

村山:もともと友達なんですよ(笑)。

今出川:みんなそうだね。

左から順に山田晋也さん、今出川行戒さん、村山和正さんの3人が映っています。3人は木製の看板の前に立っており、看板には金色の漢字が彫られています。中央の今出川さんは両手を合わせ、真ん中に立っています。山田さんは腕を組み、笑顔を浮かべています。村山さんは手を顔の近くに当て、考え込むような表情をしています。全員が和装をしており、親しみやすい雰囲気の中で撮影されています。
左から 山田 晋也さん、今出川 行戒さん、村山 和正さん

— みんな友達!?そうだったんですか。

村山:そうなんです。僕が京都に帰ってきて3年になるんですが、今まで友達関係で何か大きなプロジェクトをすることはほとんどなかったんです。きっかけがないと、なかなかみんな動かなかったんです。そんな中、今出川さんが「みんなでやろうぜ」って言ってくれて、それがきっかけで動きやすくなりましたね。

今出川: 細かいところはみんなで作り上げていくんですけど、私は「これがやりたい」っていう感じで(笑)。

村山:いやぁ、実はそれがかなり重要なんですよね。

— みなさんが知り合ったきっかけは何だったんですか?

村山:今出川さんとは知人からの紹介ですよね。それから何度か一緒に飲みにいったり、顔を合わせることが増えて、「僕はこんなんしているんです」って話をして、「なんか一緒にできそうやなっ」て思ったんです。今出川さんも、「これも縁やな」と言ってくれて(笑)。

落ち着いた表情でカメラの外を見ている今出川行戒さん。黒い和装にオレンジ色の袈裟を着ています。背景には木製の椅子とテーブルが見え、室内の一角で撮影されている様子がうかがえます。全体的に柔らかい光が差し込んでおり、穏やかな雰囲気が感じられます。

今出川:私は色んな会を主催していたので、村山くんをそこに呼んだり、呼ばれたりとかしながら、そこから色々繋がりが広がっていきましたね。僕の会には、他宗教や神社の方々など、様々な人が集まっているんです。

村山:他の場所でこの話をすると、「そんなことができるんだ!」ってみんなに驚かれますね。

変化してきた「京都」

山田:村山くんと(僕が)会ったのは大忘年会?

村山:そう。忘年会ですね。僕が京都に帰ってきてから参加させてもらった、工芸の人とか、いろんな人が集まる大忘年会があったんですよ。僕が携わっていたルイ・ヴィトンのプロジェクトで力を貸してくれた人たちがちょうど集まっていて、そこに僕が呼んでもらえたんですよ。

その会には、ハイブランドとのプロジェクトを手がけるような優秀な人たちがたくさんいました。個々の力は本当にすごい、でも「みんなで」というのは、今まであんまり発揮できていなかった。「一緒に何かやろう!」とは、なかなかならなかったんです。

今出川: 近年イベントに合わせてワークショップを色々と開催してきました。発表の場や交流の場所になるものを作ったりしてきた。 そういった中でちょっとずつ輪が広がっていき、何かする時いろんな方から協力をしてもらえるようになってきたんです。

村山:比叡山延暦寺で何かできるとなると、参加する方も気持ちがやっぱり変わるんですよ。シンヤくんは親交も深いので、特に気合が入る(笑)。

真剣な表情でカメラの外を見つめる村山和正さん。茶色い羽織と黒い和装を身に着けています。背景には観葉植物や室内の一部が見え、明るい光が差し込んでいます。落ち着いた雰囲気の中で撮影された様子が伝わります。

村山:こういうのって昔はなかったんですよ。実は、僕は京都が大嫌いで一度飛び出しているんです。当時はこういうのが一切なく、周りには怖い人たちばっかりだったんです(笑)。僕自身が京都の神社の家に生まれたんですが、寺社仏閣や伝統文化の関係者たちも、なんだか難しそうな人が多かった。

でも、久しぶりに京都に帰ってきたら変わっていたんですね。今では、こんな風に巻き込んでくれたり、「おもしろいじゃないか、やれやれ」って言ってくれる人たちがいるようになっていました。それはすごい大きな変化でした。これは京都だけの話じゃなくて、日本全体が少しずつ変わってきていることだと思います。

昔ながらの「京都」のネガティブな部分のイメージって、みんなあると思うんですけど、今は本当に変わったと実感しています。こうやって面白いことに、いろんな人が一緒に協力して、チャレンジしていけるのが今の京都だと思います。だからそういった変わってきた「京都」の姿を、世界にどんどん発信していきたいと思っています。

山田:時代が変わった、世代交代が進んだのも大きいでしょうね。

幸せへの近道は、いい「縁」をどれだけ結べるか

今出川:確かに難しい人も少なくないので、だからこそ、どれだけ良い「縁」をたくさん結んでいけるかが大事なんです。それが、より良い人生を歩むための幸せへの近道なんです。ただ、ちょっと入り口間違えたりとかすると、がらがらっと崩れちゃうんですけど(笑)。

落ち着いた表情でカメラの外を見ている今出川行戒さん。黒い和装にオレンジ色の袈裟を着ています。背景には木製の椅子とテーブルが見え、室内の一角で撮影されている様子がうかがえます。全体的に柔らかい光が差し込んでおり、穏やかな雰囲気が感じられます。

今出川:今、僕たちは本当にそこがうまくいっています。紹介の紹介で良い「縁」がどんどん繋がっています。僕はそんな変な人は誰も紹介してないでしょ(笑)?

— いい繋がりが、いい「縁」の連鎖をさらに生んでいるんですね。

今出川:そうですね。今の関係と状況を大事にしたいとみんな思っているから、そこに変な人をわざわざ引っ張ってこない。お金のことばっかり言うてくる人とかね(笑)。みんながちゃんと人を見て、厳選して紹介してくれているんです。

— お金じゃない、信頼しているメンバー同士だから成り立っているんですね。

今出川:そうなんです。ただビジネスだけ考えてやってしまうと、うまくはいかない。一瞬で崩れてしまうと思います。

— ビジネスだけではないから、垣根も、世代も、年齢も超えて一緒にやれる。これは素晴らしいですね。

笑顔で楽しげに話す山田晋也さん。黒い和装に白い襟の着物を着ています。背景には木製の椅子とテーブルが並び、窓から柔らかな光が差し込んでいます。室内の一角で撮影されたこの場面は、温かくリラックスした雰囲気が感じられます。

山田:ビジネスはお金を稼ぐこと、増やすことが一番大事だけど、「お金」の価値も今変わってきていると思いますね。

— 確かに、お金だけをたくさん稼げば良いという時代ではなくなってきていますね。「お金があること=幸せ」ではないことにみんなが気付き始めている。

山田:それは社会全体的な流れだと思います。

— そうですね。この流れがどんどん進んでいってほしいですね。比叡山延暦寺という歴史ある場所で、みなさんが世代や職業を超えて新しいことに挑戦し、それが良い「縁」を生んで成功していることは素晴らしいですね。これからの未来に向けて、明るいヒントになると思います。

インタビューを終えて

今回のインタビューでは、終始気さくにお話をしてくださったお三方。こうして素敵なお話を伺えたのも「縁」がもたらしてくれたものだと感じています。今年の夏に向けて様々な企画を用意していたとお聞きしていますが、残念ながら新型コロナウイルスの影響で中止の判断をされたそうです。

今後も、伝教大師最澄の教えにある「一隅を照らす」精神を大切に、素敵なイベントに隠されたストーリーをお届けできればと思います。

▼これまでのインタビュー記事はこちら

「ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展」ギャラリーはこちら

ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展

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