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ホームドアで救える命がある
「欄干のない橋」、視覚障碍者の間では、駅のプラットホームをそう例えています。
多くの視覚障碍者がホームからの転落を経験しており、中には複数回という人もいます。
それに加え、酒に酔ったり、病気でふらついたり、携帯電話やゲームに夢中になって、ホームから転落したり列車と接触したりという事故も数多く、中には犯罪による痛ましい事件も発生している。
さらに、ホームからの飛び込み自殺というのも後を絶ちません。
ひとたび人身事故が発生すると列車の運行が一時的にストップするだけではなく、数時間にわたってダイヤが乱れ、多くの人の移動に影響が出てしまい社会的にも大きなロスとなります。
人身事故の半数以上がホームでの事故
国土交通省は一定基準以上の人身事故や輸送障害が発生した場合、鉄道事業者に報告を義務づけており、そのデータを「鉄軌道輸送の安全にかかわる情報」として公表しています。
それらによると、平成25年度に起こった鉄道事故は全790件で、そのうち約半数弱の422件が人身事故となっています。
その内訳をみると、故意による自殺など(線路内立ち入り)が約43%を占め、それ以外の全体の約57%がホームからの転落・列車との接触による不慮の事故となっています。
視覚障碍者の6割が危険を感じている!
国土交通省の別の調査では一般の駅利用者のうち4%はホームから転落、またはホーム上で列車と接触し、17%はホームからの転落などにつながる危険な思いをした経験があると答えています。
その一方で、日本盲人会連合の調査によると、ホームから転落したことがある視覚障碍者の割合は38.5%、つまり3分の1を超えています。
この割合は、一般利用者がホームからの転落・接触を経験した割合よりはるかに高い数字です。
また、転落しそうになったことがあると答えた視覚障碍者の割合はさらに高く、約60%にも及んでいます。
視覚障碍者が一般の人よりホームからの転落による人身事故に遭う確率が高いことは、データにも示されているのです。
一般的に日本の鉄道の安全性は極めて高いレベルにあるといえますが、ホームという場所においてはまだ安全性向上の余地があり、なお一層の取り組みが求められています。
利用者の安全を守るホームドア
統計によればホームドアの設置によって人身事故(転落事故)は劇的に減少しており、ホームドアの安全性への効果ははっきりしています。
少し古いデータですが、「鉄道人身事故マップ」のホームページのデータによると、2002〜2009年度の8年間に起こった鉄道の人身事故は約9,000件で、そのうち約半数弱の4,000件が駅構内において発生しています。
その内訳をみると、自殺が約55%を占め、故意と考えられる自殺と線路内への立入りを除いた、全体の約3分の1がホームからの転落・列車との接触による不慮の事故です。
しかも、この転落や接触の約半数が酔った客によるものとなっています。
一方、同期間にホームドアが設置されている駅において発生した人身事故をみると、全体と同じ発生率ならば8年間で約190件起こるはずのところ、12件しか発生していません。
ホームドアによって転落・接触という誤って引き起こされる人身事故はかなり防止できているといえるでしょう。
このようにホームドアの設置は、ホームの安全性向上に対して大変に効果が高いことが実証されているのです。
明日は我が身 ホームドア設置を加速させよう!
近年、地方においても公営地下鉄を中心に普及の兆しが見えてきています。
しかし、全国のすべての駅を考えると、ホームドアが普及したと実感するにはまだまだ時間が掛かるのではないでしょうか。
(※ホームドアの設置された駅・路線は徐々に増えつつありますが、設置駅の数は2012年9月末で539駅と、まだ全体の5%余りに過ぎないとも言うことができます)
一方で、首都圏では地下鉄のほぼ半数の路線にホームドアが導入され、私鉄路線やJR山手線にも設置されるようになりました。
そして、2020年には東京でオリンピックが開催され、数多くの国内外の旅行客が見込まれます。
さらなる鉄道利用客の増加でホーム上の混雑・混乱は免れません。
国は、「10万人以上の駅においてホームドアの整備を優先して速やかに実施することが望ましい」との基準を示しましたが、オリンピック開催で今以上の混雑が避けられない状況を思えば、ホームドアの設置・導入を何とか加速させたいものです。
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