印象派を代表する画家クロード・モネの“光のまなざし”に没入する、体感型デジタルアート展「モネ イマーシブ・ジャーニー 僕が見た光」が、名古屋・金山南ビル美術館棟で開催中です。映像と音楽が織りなす空間の中で、モネが人生を通じて見つめた風景とその変遷を追体験。静かな没入感に包まれながら、印象派誕生の物語とともに旅するようなひとときを過ごせます。
Contents
印象派の巨匠・モネが描いた“光”を、映像と音楽で追体験

19世紀後半のフランスで活躍した画家クロード・モネ。本展では、彼が旅した土地や家族との時間、そして晩年を過ごしたジヴェルニーでの暮らしが、映像と音楽を用いて立体的に紹介されています。
展示は、印象派の名を冠するきっかけとなった《印象、日の出》から始まります。光を描こうとしたモネの視線をたどるように、空間全体が映像と音に包まれ、観客をゆるやかに没入させていきます。
絵画の中で揺らめく光が、どのようにモネの芸術へと昇華されたのか。その過程を、視覚と聴覚を通じて丁寧にたどることができる展示となっています。
クロード・モネとは? ― 光と自然を描いた印象派の画家

Adolf de Meyer撮影(CC0, via Wikimedia Commons)
クロード・モネ(1840–1926)は、フランス生まれの画家で、印象派を代表する存在として知られています。1874年に開催されたグループ展で発表した作品《印象、日の出》が、批評家によって「印象派」と揶揄されたことから、この芸術運動の名称が生まれました。

Impression, Sunrise
マルモッタン・モネ美術館所蔵。港町ル・アーヴルの朝の光景を、淡くにじむような筆致と色彩で表現した作品。「印象派」という言葉のきっかけになったとされる。
※第1回印象派展出品作は別の同名作品である可能性も指摘されている。
Claude Monet, Public domain, via Wikimedia Commons
モネは、生涯を通じて自然の風景や光の移ろいを描き続けました。特に、時間や天候によって変化する光の表情を捉えるために、同じ対象を異なる条件で描く「連作」に取り組みました。晩年には、フランス・ジヴェルニーの自宅の庭にある「睡蓮の池」をモチーフに、多くの作品を残しました。
彼の作品は、自然の美しさと光の表現に対する深い探求心を感じさせ、現在も多くの人々に愛されています。
「睡蓮」——自然のリズムを描いたモネの傑作

The Japanese Footbridge and the Water Lily Pool, Giverny
Claude Monet, Public domain, via Wikimedia Commons
フィラデルフィア美術館所蔵。モネが晩年に情熱を注いだジヴェルニーの庭を描いた作品で、太鼓橋と睡蓮の池が象徴的に描かれている。緑の陰影と水面の反射が美しい調和を生み出す。

The artist’s garden at Giverny
Claude Monet, Public domain, via Wikimedia Commons

Water Lilies
Claude Monet, Public domain, via Wikimedia Commons
オルセー美術館所蔵。モネが自邸に造園したジヴェルニーの庭を主題にした作品で、咲き誇る花々と奥に見える家が、色彩豊かに描かれている。日常の中の自然の美を追求した、晩年の傑作。
国立西洋美術館(東京)所蔵。モネが晩年に取り組んだ「睡蓮の池」の連作のひとつで、色彩と筆致によって水面の揺らぎと空の反射を描いた作品。
オランジュリー美術館の大装飾画制作のための大型習作としても知られる。
モネが描いた“光”とは? ― 見えているものの本質をとらえる

モネは、ただ風景を写し取るのではなく、「光そのものを描こうとした画家」と言われています。彼の関心は、対象の形や輪郭ではなく、時間や天気、季節によって移ろう“光の表情”にありました。
私たちが目にしている風景も、その実体を見ているのではなく、光の反射として感じ取っています。モネはこの仕組みに着目し、目に映る一瞬の感覚を、筆と色彩でとらえようとしました。
たとえば、同じ建物でも朝と夕ではまったく違った印象を与えるように、モネの連作には、同じ場所を異なる時間帯や天候で描いた作品が多く存在します。それは風景そのものより、そこに差し込む光を描いた結果でもあります。
その視点は、現代の映像技術によっても再現され、本展で体感できるモネの「光の世界」へとつながっています。
「光を描く」とは? 美術が苦手でも伝わる、儒烏風亭らでんさんの解説配信

Woman with a Parasol – Madame Monet and Her Son
草原で日傘をさすカミーユ・モネと息子ジャンを描いた、光と風の表現が印象的な作品。
Claude Monet作、Public domain, via Wikimedia Commons
儒烏風亭らでん(じゅうふうていらでん)さんは、ホロライブプロダクション所属のVTuberグループ「hololive DEV_IS」内ユニット「ReGLOSS」のメンバー。
芸術、建築、歴史、落語など幅広い文化分野への造詣が深く、美術館巡りを趣味とするほどの美術愛好家です。かつてはキュレーターを志望し、学芸員の資格も保有しています。
「見えている景色を、そのまま絵にするのは難しい」——
子どもの頃の写生体験から生まれたそんな実感をもとに、らでんさんは、「光」や「風」といった移ろうものをどう描くかという悩みに向き合ってきたと語ります。
風景を前に、常に視点が揺れ動き、時間とともに光が変化していく中で、一枚の絵に何をどう切り取ればいいのか。それは、まさに印象派の画家たちが抱いた問いでもありました。
らでんさんの配信内でのアート解説では、そうした感覚的な問いから出発し、写真の発明、チューブ絵具の登場、印象派やその後の新印象派・ポスト印象派に至る流れまでを、やさしく丁寧に解説しています。
「なぜ光を描こうとしたのか」という疑問に、歴史が答えてくれる——そんな体験ができる配信です。
「光の画家」モネの視点を現代に引き寄せるような語りは、美術初心者にも新しい視点をもたらしてくれるはずです。
学びと楽しみを広げる展示空間

本展では、映像作品だけでなく、モネの創作をより深く理解できる学習エリアも設けられています。ここでは、印象派展の歴史的背景や、モネが追い求めた「連作」という表現手法、日本の美術様式に影響を受けた“ジャポニスム”との関わりなどが紹介されています。
また、展示空間には、ジヴェルニーの「睡蓮の池」をイメージしたフォトスポットも登場。モネの代表的なモチーフに囲まれながら、作品世界を写真に収めることができます。

デジタルアート会場では、映像に合わせて解説を聞くことができる音声ガイドが無料で用意されています。スマートフォンとイヤホンを持参のうえ、QRコードからアクセスが可能です。
鑑賞するだけではない、知る楽しさ、感じる喜びが広がる空間が、この展覧会のもうひとつの魅力です。
展覧会をより楽しむ特典とコラボレーション

本展では、地域と連携したさまざまな特典企画も展開されています。名古屋鉄道からは、展覧会入場券と往復乗車券、対象店舗で利用できるクーポンなどがセットになった「モネ展きっぷ」が発売中。非売品のオリジナルシールも付属し、旅の記念にもなります。
会場最寄りの商業施設・アスナル金山では、入場券の半券提示で割引やサービスが受けられるほか、館内にフォトスポットも設置。さらに、隣接するANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋では、チケット付きの食事プランやコラボメニューも楽しめます。
展覧会と街とのつながりが、名古屋でのひとときをより豊かに彩ります。
展覧会オリジナルグッズ


展覧会概要とアクセス情報
展覧会名:
モネ イマーシブ・ジャーニー 僕が見た光
会期:
2025年4月9日(水)〜6月22日(日)
10:00〜18:00(最終入場は閉場の45分前まで)
会場:
金山南ビル美術館棟(旧名古屋ボストン美術館)
〒460-0023 名古屋市中区金山町1-1-1
アクセス:
名古屋鉄道「金山駅」より徒歩すぐ
入場料(税込):
- 一般(大学生以上):2,500円
- 中高生:2,000円
- 小学生:1,000円
※未就学児は無料(保護者同伴)
※学生料金で入場の際には学生証をご提示ください
※障がい者手帳(身体障がい者手帳、精神障がい者保健福祉手帳、療育手帳)、小児慢性疾患手帳、被爆者健康手帳、特定疾患医療受給者証、特定医療費(指定難病)受給者証、デジタル障害者手帳「ミライロID」をご提示の方は、介添えのための同伴者1名様は無料でご入場いただけます。ご本人様はチケットをご購入ください。
※ドニチエコきっぷ・一日乗車券・24時間券を利用してご来場の方は、当日券会場窓口にて当日料金より100円割引(他の割引サービスとの併用不可)
各種割引:
- 「モネ展きっぷ」利用者、名鉄・市営地下鉄一日乗車券などによる当日割引あり(詳細は公式サイト参照)
- 障がい者手帳等の提示により同伴者1名無料(本人は有料)
より詳しい情報は、公式サイトをご確認ください。
展覧会公式サイト(メ〜テレ)
名古屋観光の拠点として、愛知県内の他の文化施設や観光地情報は、姉妹サイト「Guidoor」でもご覧いただけます。
展覧会のあとも楽しみたい、愛知の文化と観光スポット
名古屋・金山での展覧会をきっかけに、少し足をのばして愛知の文化や風景に触れてみませんか?
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展覧会で感じた芸術の余韻をそのままに、もう一歩深い旅のひとときを。
・51:49 〜 美術が苦手だった記憶と、描くことの難しさ
・55:35〜 写真と印象派の関係、美術史から見るモネ
・58:21〜 モネの解説から聞きたい方はこちらから
▶ YouTubeチャンネル:
Raden Ch. 儒烏風亭らでん ‐ ReGLOSS(YouTube)