日本のクラフトビールシーンを大阪からリードする箕面ビール。1997年、大阪で誕生して以来、伝統的な製法と新しい挑戦を組み合わせることで、高品質な個性溢れるビールを生み出し続けています。
クラフトビールの祭典「Brewskival 2020 in Tokyo」に参加されたブルワリーへの独占インタビュー第1弾は、そんな大阪・箕面ビールを率いる代表取締役であり工場長でもある大下香緒里(おおしたかおり)氏です。
箕面ビールとクラフトビール造りへの深い愛情と情熱、想いについてお話を伺いました。
クラフトビールは日本では「地ビール」とも同義として扱われていますが、元々はマイクロブルワリー(小規模なビール醸造所)で造られるビールを指す言葉でした。
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家族が築き上げた箕面ビール 日本のビール文化
—クラフトビール造りのキッカケを教えてください。
大下:私たち箕面ビールが他と違うところは「家族経営」だというところかもしれません。元々私の父親である大下正司(おおしたまさじ)が小売の酒販業をやっていました。
小売の酒販業をしている中で、アルコールにも様々なブームがあり、ワイン、日本酒、焼酎、ビールなどがあると思うのですが、そんな中で日本のビールは大手4社しか扱っていませんでした。しかもラガーだけがメイン。酒屋は小売の中でビールの割合はかなり多くて70~80%を占めています。
ワインの買い付けや勉強会で世界に行き、色々なビールや文化に出会いました。日本に帰ってくると、日本の酒屋にとっては主力のビールなのに、ビールに多様性がないことに気が付きました。
そして、当時ビールというのは、基本的にはディスカウントや安売りの対象になっていました。あまりビールでは利益が取れない。このまま酒屋を続けていても先が見えていました。
ビールは世界中で一番飲まれているアルコールであり、日本でも老若男女に好まれて飲まれています。なのに、日本には大手4社しかない、そしてラガーしかないという状況でした。
そこに規制緩和というタイミングがありました。そのタイミングで、私たちはクラフトビールの造り手にはならず、造り手の商品の買い付けに動き出しました。
20数年前は、まだ小規模でやっていましたから、みな外販するまでの余裕がありませんでした。だったら、酒屋への「卸(おろし)」に特化した「ブルワリー」を、というので始めたのが「箕面ビール」のキッカケです。
当時はレストラン併設のブルワリーなどが多い中、箕面ビールは本当に工場にちょっと冷蔵庫があって、ちょっと小売する場所があるような感じで、まずは「卸」に徹するカタチでのスタートでした。
どちらかというと、酒販店向けというか小売業向けに特化して始めました。
そして酒販店などに「ビール文化の奥深さや幅の広さ、様々な味、色々な種類のビールがありますよ」と。もっと「ビールに対する視野の幅を広げていってもらいたい」というのがスタートでしたね。
「マサジビール」は2012年に他界された創業者の大下正司氏への追悼企画。毎年多くのブルワリーによって造られ想いが受け継がれている。
「箕面ビールだから飲みたい」と思わせる、個性を大切にしたクラフトビール造り
—20数年ビール造りをしてきて大事にされていることは?
大下:皆さんに「どこに一番気を遣いますか?」と言われますが、ずっと気を遣っています(笑)
「何がいい、これがいいから、ビールが美味しくできる」というわけではないし、物作りはひとつではないし、それがわかってたら簡単で、そうでないからみんな悩んで試行錯誤して、逆に自分たちしか出来ないものが出来上がると思います。
一番気にしていることを敢えてひとつ選ぶなら、ちゃんと「自分たちのオリジナル」というものが、その中で出せるようにしたいなと思っています。
箕面ビールらしい、「箕面ビールだから飲みたいね」と思われるようにするには、やっぱり自分たちのなにかしらの個性ですね。
クラフトビールを造るにあたって、バランスとかドリンカブルということももちろん意識はします。ですが、その中に「個性をどうやって出すか?」とすごく悩みながらビール造りをしています。自分たちのブランド、得意なところのカタチを作っていくのが一番の目標かなと思ってますね。
素材、つくり方へのこだわり。麦作りからローストまで挑戦
—今後の展望や、今チャレンジされていることがあれば教えてください。
大下:定番のビールのラインナップが5種類から6種類(ピルスナー/スタウト/ペールエール/ヴァイツェン/W-IPA/おさるIPA)になった。
左から「W-IPA」、「ペールエール」、「ピルスナー」、「ヴァイツェン」、「スタウト」、そして新たに加わった「おさるIPA」。
普段飲んでもらうビールでも、常にブラッシュアップをしている。細かく温度や時間を変えながらやっていて、色々な改善点を見つけて変えながらやっています。それらの積み重ねで箕面ビールの今ができた。
ただ、今後自分たちが新しく何かしたいなと思い、ホップ作りもチャレンジはしたのですが、大阪の北部なので暑すぎてダメだったんです。
今は、近くに酒造メーカーやお米作ってるところがあって、一緒に麦を作ろうとしています。
麦は精麦、麦芽にする工程とか色々と大変なんです。それを作ろうと思ったら沢山は作ることができない。
箕面ビールのフラッグシップはこのTシャツのデザインにもある「スタウト」なんですが、これは麦芽化しないんですよ。大麦そのままをローストしている。
その点がとても大事で、モルトメーカーによっては結構ブレがあったり、ロースト具合で風味が変わってくるんです。「自分たちでローストできるようにしよう!」というのを目標に去年から取り組んでいる。
まずは麦を作るところから進めていき、自分たちでローストをして、自分たちしかできないスタウトをやりたいなと考えている。
大下香緒里が選ぶ、箕面ビールを初めて飲むならスタウト!
—箕面ビールを初めて飲むお客様に勧めたいのはやはりスタウトですか?
大下:そう、スタウトですね。(本当は)一杯目に飲むビールじゃないですが(笑)
それでも「箕面ビールって何か?」かって言われた時には、やはりスタウトです。
スタウトや黒ビールって、苦手意識がある人が結構多いと思うんですけど、そういう人にこそ飲んでもらいたいなと思って造っています。
箕面ビールのスタウトを飲んで、それがきっかけで「黒ビールが好きになりました」と言う人も沢山いらっしゃいます。
イベントでも提供された箕面ビール「スタウト」。
また、箕面ビールの「桃ヴァイツェン」などに代表される、フルーツ系の銘柄に出会って、そこから「様々なクラフトビール飲むようになりました」と言ってくれる方も多いです。
人気の「桃ヴァイツェン」は数量限定販売で毎年争奪戦必至。「桃ヴァイツェン」に使用される桃は「清水」、「川中島」など全国から厳選されたもの。
最終的には、私たちが「スタウト!スタウト!」と言っているから、今まではスタウトを飲まなかった人たちも「じゃあ、そこまで言うなら飲んでみよう」かと(笑)
そして飲んでみたら「ちょっと世界が広がりました!」と言ってくれる。
色々なビールがある中で、「黒ビールが飲みたいな」と思った時には、箕面ビールのスタウトを一度ぜひ飲んで欲しいと思っています。
個性豊かな「箕面ビール」のクラフトビールを味わおう
クラフトビール造りへの深い情熱を持つ大下香緒里氏。家族経営のもとで、個性を大切にしたビール作りに取り組んでおり、自家製の大麦をローストして作るスタウトにも挑戦していると語っていただきました。
箕面ビールと言えば、他にはない味わいの「スタウト」。黒ビールが好きな方も、まだ試したことがない方も、箕面ビールのスタウトをぜひ味わってみてください。
定番ビールにはラガー、ペールエールをはじめ個性的なクラフトビールが揃っています。
限定のシーズナルビールは、季節の素材や独創的なアイデアを取り入れた限定醸造で、定番ビールとはまた異なる味わいと個性を楽しめるのが魅力です。
公式WEBには全国の箕面ビールが飲めるお店や、オンラインストアがあります。
ぜひいろいろ見つけて飲んでみて、クラフトビールの奥深さを楽しんでくださいね。
Photo by Reiko Suga
大阪府箕面市で愛される老舗ブルワリー。
1997年創業、伝統的な製法をベースに厳選素材で造られる個性豊かなビールが魅力。
品質と豊富なラインナップにこだわり、その多様性と高い品質が、国内外のビールファンから高く評価されています。
箕面産柚子を使った「ゆずホ和イト」など、地域に根差したユニークな、限定シーズナルビールも人気。