939点から選ばれた燗酒文化――全国燗酒コンテスト2025結果発表

全国230の酒蔵から939点が出品された「全国燗酒コンテスト2025」の審査結果が、8月19日に発表されました。温めることで旨みが花開く“燗酒”に光を当てる世界唯一のコンテスト。各部門で最高金賞・金賞が決定し、日本酒文化の奥深さを改めて示しました。まだ暑い季節ですが、熱燗の美味しい冬が待ち遠しいですね。

全国燗酒コンテスト2025 開催概要と審査体制

  • 開催名称:全国燗酒コンテスト2025
  • 開催日:2025年8月5日(審査)、結果発表:8月19日
  • 会場:すみだ産業会館(東京都墨田区)
  • 出品数:939点(全国230の酒造会社)
  • 部門:お値打ちぬる燗/お値打ち熱燗/プレミアムぬる燗/プレミアム熱燗/特殊ぬる燗
  • 審査方法:湯煎で温度を管理したブラインドテイスティング。上位30%が金賞、最上位5%が最高金賞。
  • 審査員:52名(酒造技術者、流通関係者、酒スクール講師など)
    審査リーダーには、日本酒造組合中央会元理事の浜田由紀雄氏、日本醸造協会の下飯仁氏らが名を連ね、技術的な厳正審査が行われました。

「温めてこそ映える」燗酒コンテストの意義

「全国燗酒コンテスト」は、世界で唯一“温めておいしい日本酒”を評価する審査会です。日本酒は温度によって味わいが大きく変化し、食との相性も広がります。本コンテストは「上質な酒は燗をしない」という誤解を払拭し、燗酒文化の再認識と国際的な発信を目指しています。

主な受賞結果(抜粋)

受賞銘柄は東北から九州まで全国各地に広がり、地域ごとの食文化と結びついた多彩な燗酒の魅力を示しています。

(※詳細な全受賞リストは公式サイト参照:https://www.kansake.jp/#aTop

お値打ちぬる燗部門(審査温度45℃)

720mLで1,250円(税別)以下、もしくは、1.8Lで2,500円(税別)以下。審査温度は45℃。

  • 【最高金賞】「澤乃泉 普通酒 CLASSICラベル」(石越醸造・宮城県)ほか計11点
  • 【金賞】「杉玉 純米酒」(桃川・青森県)ほか54点

お値打ち熱燗部門(審査温度55℃)

お値打ち熱燗部門:720mLで1,250円(税別)以下、もしくは、1.8Lで2,500円(税別)以下。審査温度は55℃。

  • 【最高金賞】「北鹿 生酛」(北鹿・秋田県)、「奥の松 金紋本醸造辛口」(奥の松・福島県)など10点
  • 【金賞】「ねぶた淡麗純米酒」(桃川・青森県)ほか54点

プレミアムぬる燗部門

プレミアムぬる燗部門:720mLで1,251円(税別)以上、もしくは、1.8Lで2,501円(税別)以上。審査温度は45℃。

  • 【最高金賞】「美酒爛漫 特別純米酒」(秋田銘醸・秋田県)、「湊屋藤助 純米大吟醸」(白瀧酒造・新潟県)など15点

プレミアム熱燗部門

プレミアム熱燗部門:720mLで1,251円(税別)以上、もしくは、1.8Lで2,501円(税別)以上。審査温度は55℃。

  • 【最高金賞】「六根 純米 雪」(松緑酒造・青森県)、「作 陽山一滴水」(清水清三郎商店・三重県)など10点

特殊ぬる燗部門

特殊ぬる燗部門:にごり酒、古酒(常温で3年以上貯蔵されたもの)、樽酒(「樽酒」と表示があるもの)など。審査温度は45℃。

  • 【最高金賞】「北鹿 垂れ口一番しぼり にごり酒」(北鹿・秋田県)、「熟成古酒 玄妙甘蜜」(本田商店・兵庫県)など4点

平安から現代へ ― 燗酒が紡ぐ文化の魅力

燗酒は平安期の文献にも登場し、江戸期には庶民の暮らしを彩る日常酒として親しまれてきました。温めることで旨みが膨らみ、料理を引き立てることから「究極の食中酒」と呼ばれる所以です。

冬の温泉宿で郷土料理とともに味わう一杯は、旅を記憶に刻む体験そのもの。今回のコンテストは、こうした日本独自の酒文化を未来へ継承し、観光資源としても光を当てる役割を担っています。受賞蔵を訪ねて土地の食や風景とともに味わえば、旅そのものがより豊かな体験となるでしょう。

世界に発信される日本の燗酒文化

日本酒はすでに世界的に注目を集めており、燗酒という楽しみ方は新たな体験の提案としてふさわしい存在です。訪日客にとって「温めて味わう日本酒」は意外性があり、旅の印象を深める一杯となるでしょう。
燗酒を通じてさらなる日本の魅力発信が進めば、酒ファンを一層惹きつけ、日本の食と酒文化の豊かさに触れるきっかけになるはずです。

その一方で国内では若い世代を中心に“酒離れ”が進んでいます。燗酒という飲み方は、日本酒の奥深さを改めて伝え、再び親しむきっかけになり得るでしょう。
熱燗やぬる燗で味わう一杯は、料理や季節の移ろいとともに楽しむ豊かな文化体験。今回の受賞酒をきっかけに、今年の冬は熱燗を楽しんでみてはいかがでしょう。季節とともに味わう一杯が、日本酒の新しい魅力を教えてくれるはずです。

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