【士郎正宗の世界展】「攻殻機動隊」と創造の軌跡──時代を越えるヴィジュアル表現の系譜

展覧会「士郎正宗の世界展〜『攻殻機動隊』と創造の軌跡〜」キービジュアル。代表作の世界観と、展示の核となる原画群への期待が高まる。

世田谷文学館(東京都世田谷区)にて、展覧会「士郎正宗の世界展〜『攻殻機動隊』と創造の軌跡〜」が開催される。会期は2025年4月12日から8月17日まで。

テクノロジーと哲学が交錯する士郎正宗の世界。その核心に触れる展覧会が、世田谷文学館で始まります。『攻殻機動隊』をはじめとした代表作を軸に、300点を超える原画とともに、その創作の軌跡を辿ります。漫画・アニメ・現代アートの領域を横断する本展は、ジャンルを超えて影響を与え続けてきた表現の源流をたどる展覧会です。

2025年には映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)の公開から30周年を迎えます。押井守監督によるこの作品は、『マトリックス』など数々の映像作品にも影響を与えた傑作として、今も多くの視点から語られています。

士郎正宗という才能──原画と創作ノートなどで読み解くその世界

1980年代半ば。“ネット”も“AI”も日常語ではなく、サイバーパンクという概念もまだ黎明期にあった頃、士郎正宗はすでに、未来社会の構造とそこに生きる人間の姿を、緻密な画面構成と独自の世界観で描き出していました。『アップルシード』『ドミニオン』『攻殻機動隊』など代表作に共通するのは、機械と人間、情報と意識、そして国家と個人といったテーマが、ビジュアルと物語の両面から精巧に組み上げられていることです。

本展では、士郎正宗による〈アナログ原稿〉〈デジタル出力原稿〉など、300点を超える原画群をはじめ、さらには制作過程の手がかりとなる蔵書や書き込み入りノートなどを通じて、創作の背景にある知的構造と、その展開の軌跡が明らかにされます。

精緻な描線に潜む思想、余白に書き込まれた“欄外”の言葉の数々は、彼の作品がただの娯楽ではなく、読み手の知覚と想像力を拡張する装置であることを教えてくれます。

ページの外側に広がる思考の痕跡にふれることで、“読む”だけでは知り得なかった士郎正宗の創作世界を立体的に体感することになるでしょう。

展示作品紹介

作家紹介:士郎正宗(しろう・まさむね)

士郎正宗『アップルシード』のビジュアル。展覧会「士郎正宗の世界展」では、本作の原画やコラボレーション作品も展示される。

1961年、1961年、兵庫県神戸市生まれ。漫画家・イラストレーター。大阪芸術大学美術学科で油画を学び、卒業後は美術教員資格も取得。在学中より創作を始め、1980年に同人誌『ブラックマジック』を発表。1985年にSF漫画『アップルシード』で商業デビューを果たす。

1989年より連載が始まった代表作『攻殻機動隊』は、後に押井守監督によって劇場アニメ化され、世界的な評価を受けることとなる。ほかに『ドミニオン』『仙術超攻殻オリオン』などの漫画作品のほか、画集『イントロンデポ』シリーズ、アニメ『ブラックマジック M-66』の共同監督など、多彩な分野で活動している。

ハードSFの設定と哲学的な問いを織り交ぜた独自の世界観、細部まで描き込まれたビジュアル、作品欄外にまで及ぶ註釈文化などを特徴とし、同時代のクリエイターたちに広範な影響を与えてきた。現在も画集やアートワークの制作を中心に活動を続けている。

多彩なアーティストとのコラボレーション──士郎正宗の世界と響き合う表現たち

士郎正宗が築き上げた未来世界は、読者だけでなく、同時代を生きるクリエイターたちにも深い影響を与えてきました。とりわけ『攻殻機動隊』に象徴される、情報と肉体、自己と他者の境界を問うテーマは、アニメーションや現代美術など多様な表現領域に静かな波紋を広げています。

本展では、そうした士郎作品に共鳴してきたアーティストたちが集い、各自の手法で応答するかたちのコラボレーション展示が展開されます。CLAMPは『仙術超攻殻オリオン』と『攻殻機動隊』のモチーフを交差させたイラストレーションを手がけ、大暮維人は『アップルシード』に新たな視点を映し出す描き下ろし作品を制作。そのほか、イリヤ・クブシノブによるデジタルアート、河村康輔のコラージュ、写真家・小浪次郎の作品など、多様な表現媒体による応答が会場に集結します。

こうした作品群は展示空間を構成する重要な要素であると同時に、ポスターやアパレル、アクリルスタンドといったオリジナルグッズとしても展開。アートとしての鑑賞と、日常に持ち帰ることのできる“触れる表現”とのあいだに、興味深い往還が生まれています。

これらのコラボレーションは、単なる“オマージュ”ではありません。表現者たちが士郎正宗という思想体系と改めて向き合い、その奥行きを読み直す中で生まれた再構築の試みです。原作の文脈を踏まえながらも、新たな問いや視点が重ねられることで、その世界観は現在進行形で再定義され続けています。

展覧会を彩るもう一つの楽しみ──限定グッズやブランドコラボ

本展では、展示作品とともに、展覧会オリジナルのグッズや、国内外のブランドとのコラボレーションアイテムが多数展開されています。会場限定の商品は、作品の魅力を日常に取り入れる楽しみとしても注目されています。

展覧会と連動したグッズは、雑貨やアパレル、食器、インテリアなど多岐にわたり、アクリルスタンドやポストカード、マグカップや絵皿セット、ラグマットといったバリエーション豊かなラインアップが揃います。キャラクターやビジュアルモチーフをあしらったデザインが多く、ファンはもちろん、アートピースとしても楽しめる仕様となっています。

ブランドとのコラボレーションでは、MEDICOM TOYによる「BE@RBRICK 草薙素子(原作版)」や、MAXFACTORYとの立体作品。

BE@RBRICK
BE@RBRICK 草薙素子(原作版) ​
100% & 400% ​

MAXFACTORY
「少女発動機 MOTORED CYBORG RUNNER」×「攻殻機動隊」​
MOTORED CYBORG RUNNER SSX_155P/S “SECTION_9” ​

BRAIN DEAD

ストリートブランドBRAIN DEADによるアパレルシリーズなど、士郎作品をベースにした多彩なプロダクトが登場。Tシャツやトートバッグ、キャップなどのラインアップは、それぞれのブランドが士郎作品の世界観を独自に解釈したものとなっています。

GEEKSRULE

MEQRI

FeTISH CLUB

Super Spartan(HAZY IPA) ​販売予定価格:税込1,450円​

士郎正宗の世界展の開催を記念して、クラフトビールブランドFeTISH CLUBからコラボクラフトビールの発売が決定。​FeTISH CLUBは東京都港区と山口県下松市に醸造拠点を持ち、“夢と余韻”への偏愛を込めた独自のクラフトビール文化を展開している。今回の展覧会に合わせて、その感性が映える特別ラベルのアイテムが登場する。

​※FeTISH CLUBの商品は見本展示のみ。​会場での販売はなし。​

関連書籍

攻殻機動隊 MESSED MESH AMBITIONS

攻殻機動隊 MESSED MESH AMBITIONS

あわせて、展覧会の公式原画集や図録、関連書籍の販売も予定されており、作品世界をより深く知るための資料として手に取ることができます。

来場者特典 イラストミニカード

会期中、来場者特典として士郎正宗によるイラストミニカード(曜日ごとに異なる全6種)が配布されます。
入場券をお持ちの方限定で、1名につき1枚のお渡しとなります。

※5月5日(月・祝)は水曜日の絵柄、7月21日(月・祝)および8月11日(月・祝)は火曜日の絵柄となります。

展覧会ガイド──会場・会期・チケット情報

◆ 展覧会名

士郎正宗の世界展 〜「攻殻機動隊」と創造の軌跡〜


◆ 会期

2025年4月12日(土)〜8月17日(日)
※月曜休館(祝日の場合は開館、翌平日休館)


◆ 会場

世田谷文学館
住所:東京都世田谷区南烏山1丁目10-10
公式サイト:https://www.setabun.or.jp/


◆ チケット情報(※先着販売・日時指定​)

🔹 チケット料金(税込)

  • 一般:1,500円(1,200円)
  • 高校・大学生・65歳以上:900円(720円)
  • 小・中学生:450円(360円)
  • 障害者手帳所持者:700円(600円)
    ※( )内は団体割引・せたがやアーツカード割引(当日券対象)
    ※再入場不可、物販のみの利用不可

◆ 特典

  • 来場特典:士郎正宗イラストミニカード(曜日変わり・全6種)
    ※チケット購入者1名につき1枚配布
  • グッズ付きチケット(4,000円):展覧会オリジナル・スペシャルトートバッグ付き(数量限定)

◆ 公式情報

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Taro Okazaki
「Guidoor Media」の立ち上げに携わり、日本の文化・歴史・観光を中心に執筆。オーストラリアでの出版社や教育機関での勤務経験を経て培った国際的な視点を活かし、日本の多様な魅力を国内外に発信しています。 文章では、地域の魅力を分かりやすく伝えることを心がけ、アートでは感情や記憶を色彩と形で表現しています。 趣味はVtuber、アニメ、音楽など。日々の好きなものが創作の原動力になっています。